SS

□ひとつ
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ボブは浮上してバートの顔を見た。誰にも見せたことのないような冷酷な表情をしている。
これはいけない、ボブはバートの肩に手を伸ばしたが、逆に取られて膝で押さえられてしまった。
「バート、やめなさい」
「……どうして愛してくれないの」
ボブは目を見開いた、バートは顔を近づけて言った
「どうして一人で処理するの、どうしてオレじゃダメなの」
ボブはここ数日バートがしてきたことの意味をやっと悟った。ゆっくりとボブの首に手がかけられる
「アンタがオレ以外の誰かを愛するなら、そいつもアンタも殺してやる」
「バート、私の話を聞いてくれ」
ボブはつとめて冷静な声で言った。バートの首を絞める力が強さを増す
「私は君を傷つけたくないんだ、君を大切に思っているから」
「そんなのいいわけだ」
どうかな、ボブは真っ直ぐに涙で縁取られた目を見た
「現実は痛みを伴う、それに君はいつか本当に好きな人ができた時に後悔する、そう思うから」
「アンタ以外に好きな人なんかいない! この先も一生出てこない!」
「バートシンプソン?」
ボブは首を持ち上げて近づいていた顔にキスをした。バートが驚いて顔を離す
「愛しているよ。君も、君が好きな人もみんな」
ボブはほほ笑んだ。バートの動きが止まった。
ゆっくりと力の抜けた足から腕を出して首にかかっていた手をどけた。あっさりはずれた手は
そのまま目に持って行かれた。顔の手で覆われていない部分から、涙がとめどなく流れていた。
啜り泣きの声が部屋に響く。少年はボブの胸から降りてベッドの端に腰かけた。ボブも起き上がって、バートの方により
小さな体をそっと抱きしめた。バートがつぶやいた
「ずるいよ、いつもそうやって誤魔化すんだ」
「私の言ったことは全部本当だ」
「うるさいなあ、それもいつもと同じセリフじゃないか」
「バート、愛してる」
「ああ、オレもだよ」
でも一つにはなれないんだね。バートは泣きながら自嘲の笑い声を漏らした。




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ボブも逃げてるのかな
それとも好きだけど触れたくはないのか
酸いも甘いも噛みしめた大人だから性欲より愛情で相手と触れ合っていたいんだね
でもバートは若いからそれが理解できない
だからボブが本当は自分を愛していないんじゃないかと思ってる
すれちがいだなあ
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