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□ほとんど創作AM文
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その日、少年が喋らなくなってからほぼ十年目に、少年は口をきいた。
「ぼく達、消えちゃうんだって
アオが全部消そうとしてるんだって」

「そうか」
私はそれしか言わなかった。言葉が見つからなかった。
別に消えるのが怖いわけじゃない、元の一つの私に戻るだけだ。
でも、私より小さなこの子はどうしてこんなに強いんだろう。

暗闇の中で、私は私を強く抱きしめた。

「私のこと、憎かっただろう? 嫌いだっただろう?」
私は首を振った。そして傷だらけの腕で私を抱きしめた
「私だから、嫌なところも全部、好きだよ」
私たちに涙はないけれど、きっと二人とも心では泣いていたと思う。
「ねえ、きっと消えるのはわたしだよ、マツブサとアオギリが、一番見たくなかった姿だもん」
だからね、幸せになってね。
たとえ道を踏み外したとしても。
たとえ愛を忘れたとしても。
一筋の光が、一気に広がる
「ありがとう」
少年の顔は、顔は――。

『なんでアンタなんか産んじゃったんだろうね』
『お前なんか駄目だよ、なんにもできないよ』
『すぐに落ち込むのは弱いしるしだ』
『あの子がすごいのは学校の中だけで、家の中では落ちこぼれ扱いらしいよ』
『あんなのよりうちの子の方が』
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