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□愛に関する短い思考
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傷一つない肌に手をすべらせると、少年がかわいらしくあえいだ。
倫理に反した背徳的な行為に、理性が冷えて熱い本能が目を覚ます。

ボブは時折思う。どうして私達は敵対関係にありながら
こんなところで隠れるように、肌を重ねるのか
何度となく考えた思考だ。だが未だに答えは出ない。

かつて殺したいほどに組んだ相手に自分を受け入れさせて喘がせて
私はこの子をどうしたいのだろう。

理由ならいくらでも作れる。以前彼の父の命を
救ったことがあるが、その後の対応が気に入らなかったとか
彼の妹は自分の弟よりできがよさそうだからとか
彼の母親の愛情を一身に受けた子が
何も知らずに身を削るのが気に入らないとか

おかしい。自分だって、自分だって子供だったはずなのに。

少年のくちびるがあまやかな声をつむいだ。
理性が急速に冷えていく。どうでもいいと
悲しい本能が、眼の前の快楽を求める。
ふと上気した頬がゆるみ、小悪魔の顔が天使の頬笑みを見せる。

大丈夫、わかってるよボブ。
そんなふうに、唇が動いた気がした。

少年は時折、秘密めいた遊びをしかけることがある。
曰く彼は私のすべてを知っているそうだ
そして同時に彼は私を一番愛しくて、そして一番憎いと評する。
その遊びにふくんだ謎と毒が、いまだに解せない

「ああ、ボブ、お願い、オレを、殺して」

少年が、いや、バートが悲しげに言った
ボブは目を閉じた。

私達の、この不毛で不純で、腐敗した関係に
終わりのないすり減らされる心の痛みに
もう出ることのできない底なし沼のような
快楽の果てをすり合わせて

「殺してあげよう」

バートが目をあけた。私は笑っていたと思う

「頭の中を、真っ白にしよう」

私達は考えることを放棄した。
2人が一瞬の死を手に入れるまで、あと何秒。


END
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みなさんお久しぶりです
新年早々暗い文章ですが
頑張って更新しますので
今年もよろしくお願いしまーす★
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