この願いが、届いてしまったからいけなかったのだろうか。
それはだれも知ることのできないことだけれども、それでも私は時々思うわ。
私がいなければよかったのだろうか、と。
きっとあの方はそんなことない、って笑い飛ばしてくださる。そして私もそれを望んでいる。だって、そうでなかったなら私はとっくに壊れているから。
けれども、一抹の不安は消えるどころか募ってゆくばかり。
だれか、私を助けて。
その願いすら、天には届かなんだ。
あの子を産んだ私が悪いとでもおっしゃるの?
あの子を愛した私が悪いとでもおっしゃるの?
いいえ、それは筋違いというものだわ。一番悪いのは、あなたでなくて? ねぇ?
それを口に出すことは叶わなかったけれど、少なくとも私はそうおもったわ。
私でも、あの方でもなく、あなただと私は思うの。
ああ、代わることができるのなら、代わってやりたい。あの汚い渦の中から、あの子を救い出して、平和を与えてあげたい。
それができないなら、いっそ私は……──
あの子は耐えていけるかしら。あの子は誰かに守ってもらえるかしら。
私の血が混ざったあの子。私の一族の血に侵されたあの子。
穢れを知らないけれど、あの子は生まれながらに穢れている。かわいそうな子。
平和も、共存も知らない子。
きっとあの子を求めて争いが起こり、たくさんの人々が死ぬわ。
そしていつしかあの子は、それが自分のせいだと気づいてしまう。
悩み、苦しみ、抜けることのできないその闇の中で、もがき苦しむことでしょう。
でも、私はあの子に忘れてほしくないわ。
どんなにあなたが自分自身を嫌っても、あなたにはたくさんの味方が、仲間がいるのだということ。そしてそれがどんなに尊いのかということ。
それをあなたには忘れてほしくないの。
ああ、穢れた血を受け継ぐかわいい、かわいいあの子を、私はずっと遠く、そう、地の果てより遠くから、見守っているわ。忘れないでね。