Theater of the end

□+理由+
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「へ…?」
三人は思わず声を上げた。
「私は行けないの。」
フロワはもう一度言った。そしてまっすぐキャロを見て、
「私には、弟がいました。そうね、生きていれば、あなたぐらいの子。あの子も劇場の舞台を見たの。
だけど、あの子はあいつに魂を取られたのよ。私は何もできなかった。あの子を助けられなかった。だから私は毎日教会に通って、あの子の冥福を祈っているのよ。」
フロワはゆっくりと語り終えると、ジッとイザクを見つめた。そして、鋭くこう言った。
「貴女はどうして、そんなに戦おうとするの?」
イザクは、しばらく黙り込んでから静かに言った。
「…私には、こうする事が最善の行動だと感じたからだ。皆覚えていない。皆魂を取られてしまった。
そんな中で、私達だけがハッキリと思い出したのだ。だったらそこには理由などなく、これ以上の犠牲を出さないために戦おうと思ったから。それだけだ。」
フロワは、静かに目を閉じて言った。
「貴女は強いのですね。女性なのにそんなにたくましいのですもの。私は逃げていたのカシラ…?」
キャロは何も言えずにそこにいた。自分にも姉がいたのだ。気持ちはわかるけど、わからない。自分だって姉が大好きだった。
だけどやはりどこかで甘えていたからか、フロワのように苦しみと憎しみを持っていない。護る者を守れなかった痛みは、キャロには苦しすぎたのだ。フロワは言った。
「…少し、時間を下さい。よく考えて見ます。あの子にとって最も良い方法を・・・。」
三人は黙って、教会を後にした。
キャロはその後しばらく考えていた。姉がいなくて本当に悲しいのか。
ならなぜ、フロワのように苦しくないのか。
「…なんでかなぁ。」
キャロはふうッと息を漏らした。
「フロワさんのことか?」
ひょっこりと顔を出したのはカーンだった。
「まぁそれもありますけど。」
キャロは曖昧に答えた。
「まぁ彼女の気持ちもわからないんじゃないけどな。」
「はい。だからどうしろとも言えないです。」
「でもさ、彼女わかってると思うよ。」
「え?なにがですか?」
カーンは真剣に話しているのがキャロにはわかった。
「フロワだって劇場があっちゃいけないって事はわかってるだろうし、弟にだってその方がいいと思っているんじゃないか?
ただ、彼女は戦闘向きじゃないし、現実的に考えたら俺達だって無謀なことしてるんだ。だけど俺達はさ、1%の可能性だけで異次元に飛び込もうとしてるけど、俺らの中で誰も破滅に向かっていくつもりはさらさらないダロ?
そうゆうことだ。」
カーンはにっこり笑ってキャロの頭をなでた。
「お前もあんまり考えすぎんな。きっと俺達で破壊しようぜ。」
キャロは、ゆっくりと落ち着いていくのがわかった。
「…はい。でも頭をなでんのはやめてください。」
「ははっ!面白いなぁ、お前ってさ。」
そう言いながら、カーンは部屋に戻って行った。
「…面白いのはどっちだよ。」
ちょっとふてくされたキャロの呟きを聞いていたのは、キャロの大好きな星達だけだった。
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