Theater of the end

□+独り+
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イザクは一人、部屋に居た。
だからと言って特に何もせず、ただジッと震えていた。
「どうしたんでしょーねぇ?イザクの姉さん?」
ジェシカは隣にいるキャロに話しかけた。
「…わからないや。今までこんなことなかったし。」
キャロはジッと考え込んでいた。今まで何もなかったのに…。
「そこの少年達…。」
再び聞き取りにくい言葉が聞こえた。
「…あんたは、イザクと…。」
カーンは、老人を指差していった。
「はい。じいのヤスマルと申します。」
老人は、少々なまりが強い英語を話していた。
「それでヤスマルさん。僕らに何か?」
「そうでございます。…実は、」
老人は静かに言った。
「私どもにイザク様を返してくだされ。」
「はぁぁぁ!?」
カーンは叫んだ。
「何でだよ!イザクはもう俺たちの仲間だぞ!?」
「そうよ。彼女は私達にとっても大切なのよ?」
二人はすぐに文句を言った。
そこにコウランは、
「…俺は、あの人のおかげで今ちゃんと前を向いていられているんです。
だから俺はあの人に恩返しするまでは帰ってもらいたくありません!」
「じゃあ、彼女の幸せは何だと思いますか?」
老人はコウランに向かって言った。
「そ…それは…。」
「彼女を思うなら、女性を戦場に出すなど馬鹿げているとは思いませんか?」
さらに追い討ちをかけるように言った。
「イザク様の幸せのために、彼女には我が国へお帰りいただきます。」
それを聞くと、みんなしんとしてしまった。キャロは言った。
「…でも、イザクさんは自分でここまで来たんじゃないですか?家をとび出してまで――、」
「貴方に彼女の何がおわかりですか?」
老人はキャロを冷たく見つめた。キャロにとって、それは一番聞きたくない言葉だった。
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