金の華

□ゴミ箱
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クシャクシャと、書き損じた紙を丸めてゴミ箱に放り込む。
綺麗な放物線を描いたゴミは何処にもぶつかる事なくストンとゴミ箱に収まった。
これで、あの紙は用無しでいらないモノになる。

「こんなに簡単に捨てられたら良い」

誰にともなく呟く。
実際にこの部屋には持ち主であるハーレム一人だけで、返事を期待する方がおかしな話ではあるが。
煙草を咥えたハーレムは、長い足を机に乗せて舌打ちを漏らす。

「リキッド……」

ハーレムの愛した可愛い新人がいなくなってから、もう四年目を迎えようとしていた。
自分から離れていったと分かっているが、ハーレムにはリキッドの事が忘れられない。

「お前との思い出も、お前への愛も、全部捨てられれば楽になれるのにな」

自嘲するように笑ってみせ、ハーレムは細く煙を吐き出した。
ハーレムは引き出しからよれた写真を取り出し、そっと撫でる。
幾度となくゴミ箱に投げ入れかけた写真は皺が寄り、汚れていた。



END
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