金の華
□幸福論
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この島は美しい青に覆われている。
澄み切った空と海。
原始の自然を留めた大地は植物も青々としていて、小さい頃から自然とは無縁の生活を送ってきた俺には毎日が新鮮だ。
とは言え、もう四年も暮らしていればその新鮮さも薄れてきてはいるが。
「リッちゃーん」
「げっ!!」
「おいおい。元上司に対してそんな事言うのはこの口か?」
ドタバタと足音高く乱入してきた元上司、ハーレム隊長に俺は乾いた笑みを返した。
料理をしている俺の真後ろに立つ気配。
俺よりずっと逞しい腕が後ろから伸びてきて、胸の前で交差された。
同時に俺の心臓が飛び跳ねる。
「悪い口は塞いじまうぜ?」
顎に手を掛けられ、持ち上げられる。
俺が口を開く前に、隊長の唇が柔らかく塞いだ。
「もう塞いでんじゃん……」
自覚はしている。
心臓なんてもう過労でぶっ壊れるんじゃないかってほど激しく打ってるし、顔から火が吹き出そうなほど熱い。
それでも、何とか目を開けてまだ近くにいる隊長の目を眺めた。
口では意地を張るように悪態をつくのも忘れない。
「何か言ったか?」
悪戯に細められたつり目。
その表情がカッコいいだなんて、死んでも言ってやらない。
「べっつにー」
頬を膨らませながら明後日の方に顔を向ければ、隊長の指が頬をなぞってまた目が合う。
もう既に「お決まり」と化してる行動だけど、順を踏むように辿られるその動作が愛しい。
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