金の華
□青と青の境界線
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「お前は、この空に誰を重ねてるんだ?」
思考に耽っていると、苦々しい調子でストームが尋ねてきた。
どうやら、俺の思考回路とやらは随分と単純に作られているらしい。
出会って間もないストームに勘付かれるなんて、正直思っても見なかった。
「誰かを重ねて見てんだろ?」
真っ直ぐに、青い目が俺を見据える。
重なりそうで、やっぱり重ならない強い視線。
「アンタにそっくりな、横暴で我儘な俺の上司」
「……そんなに似てんのか?」
「そっくり」
だって、アンタはあの人の前世……過去の姿なんだし。
「そんなに似てんのに、俺は拒むんだな」
あぁ。
そんな風に悲しそうに目を伏せるの止めてほしい。
その顔で、そんな事されると俺は弱いんだから。
でも、それでも……
「ごめんなさい。俺はあの人に愛されて、あの人を愛すだけで手一杯っすから」
苦笑を浮かべて、ストームから目をずらす。
これ以上見ていると、酷く物悲しい気持ちになってしまう。
そうなれば俺はきっと、ストームの望む通りにしてしまうだろう。
それが、俺自身だけじゃなくストームやあの人に暗い影を落とすことになっても。
「もしもこの空と海が一つに混じる場所があるなら」
そう、それはあくまでも想像でしかないけれど。
「アンタの腕に抱かれてたかもしれない」
同じ青なら、同じ存在なら、過去とか未来とか……そんなものすら混ぜ込んだものなら、こんな罪悪感なんて持たなくて済んだかもしれない。
こんな、酷く苦しい恋しさなんて知らずに死んだかもしれない。
まぁ、あくまでも想像だけど。
「けど、やっぱり空は何処までも空で、海はずっと海だから」
俺にはあの人だけいれば良い。
あの人だけに、愛されればそれで良い。
【END】