□七夕の夜は我侭に・・・
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見た目は細いように見えるけど 袍を脱げば逞しい腕が眼を引く。

この上ない優しい愛の調べは心地良く耳に届き 
どこまでも優しい瞳なのに そのくせあたしを射抜く。

柔らかい銀色の髪は 手で梳くとサラサラと指の間を通り抜け
柔らかい唇は見た目と違って 少し冷たい。

その全てが あたしを包み込んだら あたしはあの人には敵わない。

『神子様・・・』

濡縁で夜空を見ながら銀の事を考えていると
当の本人から行き成り声が掛かり 望美は少し驚く。

『銀・・もうっびっくりさせないでよ』
『申し訳ございません。気配を消していたわけではないのですが』

しゅんとしたように銀が言うので 望美は慌てる。

『ごめんなさい。銀の事考えていたら行き成り
 本人が現れたから慌てちゃったの』
『左様でしたか・・。神子様に思って頂けてとても光栄に思います』

銀は笑顔になり 望美を抱きしめた。

『で・・私の事をどんな風にお考えでしたのでしょう?』
『えっ?それを聞くの?』
『はい。聞きとうございますが・・』

ニコニコしながら望美の顔を見つめるその笑顔に
逆らえる女がいたら お目にかかりたいもんだ。

『銀はズルイ・・』
『ずるい・・ですか?』
『そうズルイの。優しい声や笑顔や眼差しや甘い言葉や唇・・・
 全てであたしを惑わすから・・・。おまけに綺麗だし繊細だし・・
 そんな事を考えていたの。此れで良い!!』

言うだけ言って望美は プイっと横を向く。
銀は一瞬 瞳を大きく開いたが 次にフっと笑顔に戻る。

『神子様も同じです。そうやって私の心を惑わすのが
 とてもお上手ではないですか?』

そんな事は無い!!と言おうとした唇は銀に塞がれてしまう。

こうなれば何時も銀のペースになるのは必然的な事。

『神子様・・触れてもよろしいでしょうか?』
『もう触ってるでしょ。聞かないでよ・・』

クスクス笑いながら望美は答える。

ふわりと抱き上げられ 奥の部屋に連れて行かれる。
褥に静かに下ろされ 直ぐに銀も望美に覆い被さる。

『銀・・もう少し夜空を見て話がしたかったのに・・・』
昨日から バタバタと銀の仕事が忙しく
落ち着かない雰囲気があった。
抱かれるのも嬉しいが 少し話がしたかったというのも本音である。
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