□七夕の夜は我侭に・・・
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『申し訳ございません。明日の晩は七夕でございますので
 明日の晩ゆっくりと語り合いましょうか』
『えっ?じゃぁ七夕まつりじゃん。短冊に願い事書くの?』

『いえ 熟瓜・梨・大角豆・茄子・桃・大豆・干鯛(ほしだい)・
薄鮑(うすあわび)などの山海の産物をお供えし
梶の葉に古歌を書き、琴を飾って祈るのです』
『ふ〜〜ん。そうなんだ。牽牛と織姫の話は知ってる』
『はい。存じております。
 我(わ)が待ちし、秋萩(あきはぎ)咲きぬ、今だにも、にほひに行かな、彼方人(をちかたひと)に・・・という2人になぞった詩もございます』

明日は晴れると良いね・・。
この台詞を最後に甘い2人の夜が始まる。

翌日は幸運にも晴れ渡り 夜が待ち遠しいと望美は思う。
銀は相変わらず 忙しいようで朝早くから出掛けていた。

将臣が仕事の合間に顔をだす。
『何ニヤニヤしてんだよ・・』
『将臣君・・今日は七夕だから晴れて良かったなって思ってたんだ』

そういう事か・・・。
一言だけ興味がなさそうに呟く。

『七夕まつりしようぜ。景時んちで宴を開くから
 銀も誘いに来たんだ』

その言葉に望美は引き攣った笑いを浮かべる。
今日は2人で居たいんだもん。などと恥ずかしい事は言える訳がない。
わかった!とだけ返事をして将臣を見送る。

夕日が西の山々の間に沈もうとしている。

『神子様・・』
御簾ごしに銀が声をかける。

七夕の準備も終わりましたので これからは神子様のお相手を
させて頂きますね。

そんな言葉も溜息で返す。
『将臣君が昼間来て 梶原邸で七夕の宴をするから 来いって・・・』
『神子様は何とお答えになったのですか?』
『だって・・銀と2人で居たいなんて恥ずかしくて言えないから
 わかった!って返事したよ・・・』

銀は望美を抱きしめると では参りましょう!とだけ伝える。

『やっ!』
『お約束は守らなければなりません。中座してもよろしいのでしょう?』

望美は銀の肩に顎を乗せ 
『早く帰ってきて2人で星を見ようね。約束だよ』
と囁く。

銀は笑顔で 承知しました!とだけ答える。
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