□七夕の夜は我侭に・・・
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梶原邸に着くと 既に宴は始まっていた。
望美は笑顔で銀の隣に据わり 久しぶりの譲の料理に舌鼓を打つ。

将臣に酒を勧められ 銀は杯を空ける。
暫くして 望美が銀の袖を引っ張る。

『銀・・余り呑んじゃダメ』
『大丈夫ですよ。私は神子様と違って幼少の頃からお酒を嗜んでおります。
 神子様に酔ってもお酒には酔いませんから・・・』

どうしてそういう事をサラリと言えるのか?
望美は真っ赤になる。

『何だよ。2人でコソコソ・・・』
将臣が意味深な笑いを浮かべ望美に酒を勧める。

朔も2人は仲が良くて見ていて羨ましいわと言い
望美の杯に酒を注ぐ。

元八葉も久々の望美と話をしようと 徳利片手に代わる代わる
望美に話しかける。

譲が傍に来た頃には 顔もほんのり赤く銀に寄りかかり
フワフワした気分である。

譲が杯に酒を注ぐ。

『ねぇ譲君・・』
『何ですか先輩?』
『今夜は久々に銀と2人きりで居たかったのぉ〜』
『はっ?』

望美の発言に皆がキョトンとする。

『じゃぁ 兄さんに断れば良かったじゃないですか』
『そ〜〜んな事恥ずかしくて言えないジャン!!』

《今充分言っている!!》
譲は心の中でそう思ったが口に出すのは止めた。

『行きたくないって言ったのに 銀が約束したのならって言うし・・
 銀のバカっ!!』
『申し訳ございません・・』
『早く帰ろうって言ったのに・・・まだ居るし・・
 銀のば〜かっ!!』
『申し訳ございません・・・』

しゅんとしている銀の膝の間に割り込み 胸に顔を埋める。
『銀なんて大嫌い・・』
抱きつきながらの台詞では説得力が全く無い・・。

『望美言ってる事と行動が逆だよ・・・。
 銀・・少し酔いを醒ました方がいいな』
『お言葉に甘えてそう致しましょう』

静かに銀が望美を抱えて濡縁に向かう。
『ああ銀。望美は本気で言ってないって事は解るよな。
 拗ねて甘えてるだけだからな』
後ろから聞こえる将臣の声に ニッコリ微笑んで銀が振り返る。
『承知しております』

少しひんやりとする風が望美の火照った頬を撫で
背中は銀の掌が優しく撫でる。

額に掛かる紫苑の髪を銀の手が そっと掻き揚げ
次に軽く唇を寄せる。目蓋に頬に唇に・・・順番に下りていく。

星空を見上げる瞳は いつものように優しい。
『し・・ろ・・ね・・』
途切れ途切れの声に銀の瞳が夜空から望美を映す。

無意識の内に銀の首に望美の両手が回される。
『神子様・・・?』
『・・・・』

銀は溜息を吐き 望美を両手で抱きしめた。
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