□伝えきれない愛
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ちっとも悪いなどとは思っていないのは解っている。
自分の事で不安になり追いかけてくる・・・。
その時は思いっきり抱きしめて 不安を吹き飛ばすくらい
甘えさせる・・・・。
腕の中の愛しい存在が 自分の筋書き通りになっていく・・・。

涙を拭っていた唇は頬から鼻先 最後に唇へと移っていく。
『しろ・・・がね・・・』
『お詫びのキスです・・・』
口角を上げると銀は再び啄ばむようなキスをする。
『大好き・・・しろ・・・』
言葉の途中で舌を絡めとるような深いキスが望美を襲う。

『はぁ・・・・っん・・・』

ガクっと望美の膝から力が抜けるのを予測していたように
銀が望美の身体を支える。
『望美・・・』
『抱っこして・・・・』
『先ほどまで角を生やして怒っていたくせに
 今は甘えん坊ですね・・・』
言葉とは裏腹に嬉しそうに銀が望美を抱き上げた。
『そうして いつも私だけの事を考えていてください。
 そして私にだけ甘えてください・・・』
『言われなくても そうしています・・・』
銀はクスっと笑うと 自室の襖を開け
望美を抱えたままそっと腰を下ろした。

『銀は ちっとも解ってないよね』
『分かっていない?何をでしょうか?』
『自分が あたしにどんなに愛されているかってこと!』
銀の瞳が大きく開かれ 次に嬉しそうに微笑んだ。
『そうなのですか?』
『あたしは・・・・何がなくても銀さえいてくれれば
 それだけで幸せなの。
 銀の代わりなんて誰にも出来ないの・・・・
 なのに・・・意地悪ばっかり・・・』
『可愛い神子様を見ると つい・・・
 それに他の男と楽しそうに話されている お姿など見たくもありません』
『楽しそうにって・・・』
望美はフーっと溜息を吐いた。
『日常会話というか 付き合いというか・・・
 普通に話しているだけでしょ。愛を囁いている訳じゃあるまいし
 大袈裟だよ・・・』
『望美だって怒るでしょうに・・・』
『あたしはそんな事ないもの』
『女房達と談笑していると 怖い顔をしていますよ・・・』
『それは・・・・』
『それは?』
『面白くないからだよ。もうっ!ずるい!
 でも あたしは2日間も無視しないもん・・・』
『それは私が望美を丸め込む・・・いえ
 宥めて機嫌を直すのが上手いからでしょうね・・・』

クスクスと笑いながら 何も言えない望美の髪を一房取ると
そっと口付けた・・・。
『怒った顔も泣いた顔も笑った顔も・・・・
 これから見る顔も・・・全て私のものです』

柔らかい言葉とは裏腹に この人の一言一言には重みがある。
捕らわれて嬉しいのに どうすればそれを伝えられるのか?
焼餅を妬かれるのは とても嬉しい・・・・
でも・・・・

望美はそっと銀の唇を指先でなぞった後
自分のそれを押し当てた。
『大好き』は こうしたら伝わる?
『あなたしかいない』は こうしたら届く?

『望美・・・』
甘く自分の名を呼ぶ声は 望美の身体をゾクリとさせる。

『その声だけで感じちゃうのは 銀だけだよ・・・』

銀は艶やかな微笑を望美に贈ると そっと耳元で囁いた。

『では 私の全てで貴女を感じさせてあげましょう・・・』
『もうっ!・・・・』

望美は照れ隠しに 怒ったフリをするが
直ぐに両手を銀の首に絡ませた・・・。

『銀も・・・あたしだけを感じて・・・
 ずーっとね・・・・』
『承知しました。ずっとですね・・・・』

意味不明の黒い微笑みは ずっと続く二人の熱い秘め事を
暗示している事を 望美はまだ気付いていない・・・・。


fin
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