『recollection』ー桜雷に涙の雨降れたり




『夢なら醒めて下さい…。嘘だと言って下さい…』と何度願った事だろう。
幼すぎた甘い考えが招いてしまった悲劇は記憶の狭間に埋め込まれるものだと知った。
苦し過ぎて、辛すぎて…。私は一度、記憶を無にした。

家族も、亡き兄の存在も…。

脳内から消した。

幾年の月日が流れ、私も大人になった。愛する男性との間に双子を授かった。
勿論、記憶も戻ったわ。
だから、あの日の悲劇を忘れない為にも、思い返す事を許して下さい。
私を必死に守ってくれた祖父様と兄様。

天界を統べる姫神の姪っ子『桜雷帝 聾牙』は、最愛の兄の墓の前で、娘と息子に、幼い頃の話をしていた。
叔母にあたる華月との思い出の中で、自分が記憶を無くした事のキッカケが、亡き兄の死が、関係しており、発端となった冥界王族の『ムン』の若き皇子が、欲していた物が、今だに、解らずにいた。
その中で、魔界帝国を統べる魔王となった夫にあたる『カギリ』との出逢いが、聾牙の人生を変えていった。

少し、切なく、甘酸っぱく見えて見えない恋愛。
義理の妹は、何気に、シビアだった。

「お父様の家系から、上げると…」

「まだ、やっている。紫月」

「紫御も、数えてよ…!五大王族とか、お父様に、習った?」

『紫月、それは…『ブルブェニ』『フリア』『●●●』と、並べていけば宜しいのでは?』

双子の姉に、聞こうとしたら、叔母の優しい声音が響いてきた。
母様には、内緒にしておきたい紫月だった。

※血要素及び、グロい表現が、含まれる場合があります。苦手な方は、回れ右をして下さい。

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