ごった煮

□いくら手を伸ばせど
1ページ/2ページ


長い、長い闇との戦いは幕を閉じた。

多くの犠牲の上で、この平和は生まれた。


内側から闇を壊す―

彼がそう決めて闇に身を投じたときから、こうなることはわかっていたはずだった。

私たちが二人でいられる未来は約束されていなかった。

人払いの呪文がかけられたセブルスの眠る場所。佇む私の後ろに誰かが姿あらわしする気配。…ポッターか。


「――偉大な、人でした。」


後ろからポツリとかけられる声。

「僕はその事を世に広めるつもりです。…彼は報われない。」

ポッターの持論に耳を傾ける。
こちらが反応する気がないのを悟ったのか彼は勝手に続けた。

「彼こそ英雄であるべきだ。自ら盾になって世界を守った。重罪人のまま終わるなんて可哀相すぎる。」

最後の一言で押さえていた理性が切れた。

「黙れグリフィンドール!」
「!?」

唸るように低い声をあげれば驚いたように息を飲むポッター。
そういえば彼らの前でこんな怒鳴り方は初めてか。本性など安易に隠れるものだ。

「グリフィンドールはいっつもそう!物事の本質も見抜けずに歪められた事実ばかりに目をやる。
報われない?彼こそ英雄であるべき?可哀相?
あんたはセブルスの記憶で一体何を見たんだ!墓まで持って行くつもりだったもん全部見て、わかったのはそれだけか!?
セブルスはそんなことのためにあんたに記憶をやったんじゃない。
なんでダンブルドアがわざわざセブルスに殺させたと思ってる!"英雄"はひとりでいいからだ。あたしたちはリリーが死んだあの日から…いや、もっと前か。ずっと覚悟はしてきたんだ。舐めんな。
あたしたちの20年間を可哀相の一言で済まされてたまるか。」

ポッターは最初こそ反論しようと口をパクパクさせていたが口をつぐみ、バツの悪そうな顔で目をそらした。




いくら手を伸ばせど
(あの人はもうどこにもいない)



拭ってくれる手を失った涙は救われず




次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ