Hero Game

□賽は投げられた
1ページ/53ページ




雲一つない青空に
小さい黒い点が浮かぶ。
それはだんだんと大きくなり―















「…なんかすごい勢いでこっちに向かってない?気のせい?」

森の奥深くで訝しげに空を見上げた
黒髪の女が隣に立つ黒髪の男に尋ねる。
男は腕を組み、同じように空を仰ぎ口を開く。

「―心配するな、妹よ。
……確実にこちらに向かってきている!」

自信たっぷりに話す男に女は拳を突き上げた。

「自信たっぷりに言うな!
…とりあえ、ず!」

そう言って女は男のローブの襟首を掴んで自分の前に突き出した。

「盾になろうか。」

とてつもなく綺麗な笑顔で女が言うのと同時に男の顔に黒い何かが突っ込んでいった。

バサバサと格闘する音が続く。

女は腕を組みニヤニヤとその光景を見守っていた。

「――何すんだ章良!!」

ようやく黒い何か―フクロウを肩に乗せ立ち上がった男は女をキッと睨みつけ低く呟いた。

章良、と呼ばれた女はヘラリ、と笑い答える。

「命がけで可愛い妹を守るのが兄ってもんでしょ?章都。」


章都と呼ばれた男は溜め息を一つつき、
人差し指と中指の間に挟んだ手紙を
ビシッと章良の前に突き出した。


「これなーんだ?」



ニヤリと笑う章都に章良は真顔で答えた。

「手紙。」

章都はガクッと肩を落とした。
肩にいたフクロウは頭の上に移動している。

「それは見りゃ分かる。そうじゃなくて」

「依頼のお手紙。
しかも多分相当面倒くさい依頼主。」

章良の間髪入れない答えに再び肩を落とした。

「わかってんじゃねぇか…
その通り。懐かしい印だと思わないか?」

章都は手紙の蝋印を章良に見せた。

「――ホグワーツ魔法魔術学校…
あぁ、あいつか。元気かな?」

章良は章都から手紙を抜き取ると封を開けた。
章都も横から覗き込む。


…沈黙が2人を包んだ。








「――見間違いかしら、兄さん。
あぁ、私目が悪くなってしまったんだわ。」

「……安心したまえ、妹よ。
確かに書いてある。」

「「……どうしてだ……」」






次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ