BASARA 短編集
□半分こにした手袋
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しんしんと降り積もる雪。
あたし達は一組の手袋をそれぞれ片方ずつつけて、手袋をしてない方の手を繋いで歩いていた。
「さみぃな…」
不意に隣の元親が呟く。
『そお?』
元親は一瞬目を丸くしてから、言った。
「おめぇは寒くねぇのか?」
『うーうん。寒いよ』
「矛盾してんじゃねぇか」
元親が顔をしかめる。
『寒いのは好きだからいーの』
元親は理解出来ない、とでも言うかのように肩を竦める。
『だってね、あったかいものを、素直にあったかいって思えるでしょ?』
あたしは元親の手を握る右手を元親の顔の前に持ってきて、笑う。
当然ながら一緒に顔の前にやって来た自分の手とあたしの手を見つめてから、元親も笑った。
『隙ありっ!』
ただ流れていた静かな時間を破るように、元親の左手を離して、手袋をしていない冷え冷えの手を、元親の首の後ろにあてがう。
「うぉっ!冷てぇ!!」
『あはは、あったかい』
元親は困ったような笑顔を浮かべてから、あたしを抱き締める。
「確かに……あったけぇな…」
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