捧げもの
□魅惑のお菓子
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「──先輩の分からず屋!どうして分かってくれないんですか!!」
「うるせぇなぁ・・・分からず屋はお前だろ」
生徒たちが完全下校した静かなはずの廊下で、何やら男性二人が揉めている。
一人はハチマキをした新米教師で、少し声を荒げて抗議をしているようだ。
対して相手のオレンジ頭は呆れた様子で腕を組んでいるが、ハチマキに言葉を投げつけられる度に徐々にイライラを隠せなくなっていた。
彼らが揉める理由とは。
「どうして・・・分からないんですか・・・・。
メロンパンの魅力を・・・・!」
何故夜の7時にこんな討論が起こっているのか、DTOとハジメは最早覚えていない。
最初は一緒に高等部を見回りしていて何気ない話を交わすだけだったのだが・・・
気づくと「メロンパンかシュークリームか貴方はどっち派!?」みたいな話に変わり、現在に至る。
「お前なぁ、メロンパンなんかより絶対シュークリームだって。
あんなぽさぽさしたパンよりふわふわな菓子の方が何倍も美味いぜ」
「確かに俺もシュークリームは好きですけど、メロンパンのあの甘さが好きなんですよ俺は!
「あの飽きる甘さがかぁ?」
むぅ、とハジメが更に不機嫌そうに口をへの字に曲げる。
「飽きるとは何ですか!シュークリームの甘ったるいクリームの方が飽きちゃいますよ!」
「・・・言ったな、ハジメ」
DTOはひきつったように笑う。だがよく見ると彼の表情は明らかにキレかけ寸前だった。
「シュークリームを侮辱する奴にロクな奴はいねぇ・・・。テメェはもう金輪際シュークリームを口にすんじゃねぇぞ」
「なっ・・・・!じょ、上等ですよ!それじゃあ先輩も、二度とメロンパンを食べないで下さい!」
ハジメがそう叫び、踵を返してさっさと進んでしまった。
DTOの怒りも収まり、ようやく彼も歩き出した時には、
ハジメは既に角を曲がって階段を下りていった。
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