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□ヒーローブルー
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小さい頃、私はすごく泣虫だった。
引越し家族だった私は、幼稚園の時から転校と転入を重ねて友達を作ってもすぐにお別れをしてしまうから積極的にもなれず、1人で過ごす事が多くて寂しくて泣いていた
小学校では、2年生の頃に転校をしたので新しい学校にはもう友達のグループを作っていて入れる雰囲気ではなかったから更に寂しくなったのを覚えてる
そんな1人だった私をからかう子も居た、その子の言葉に言い返す事なんて出来なくてただ涙を流していた日々。
そんな泣虫な私に、ある日ヒーローが現れた
「やーい!1人ぼっち!かわいくもねえし泣いてばっか!」
「毎日泣いてあきねーのかよ!」
ドン、と肩をおされて尻餅をついた私は相手を見てまた涙を溜める
「…ふ、う…」
「げ!また泣くぜ!」
「おい!何してんだ!」
突然知らない声が聞こえてきて、視線を向ければ青っぽい長袖の男の子が立っていた
「げ!お前松野!!」
「何松かは知らねーけど!なんだよ!」
「女の子をいじめるなんてかっこ悪いぞ!それに俺はカラ松だい!」
相手の子と私の間に立ったその子は松野カラ松というらしい。
私は今まで助けられたこともなかったので、ただ呆然と前に立つ松野カラ松くんの背中を見つめた
「おめーには関係ねえだろ!」
「関係なくても泣いてる子はほっとけないだろ!!」
ヒーローだった。
僅かに震えてる指先が目に入り、この子は自分も怖いのに私を助けようとしてくれてるんだと分かったとき、すごく胸が温かくなった
「この場合、お前らの方が悪いからな!!俺とケンカしてもお前らが怒られるぞ!」
啖呵をきる松野カラ松くんに、相手の子は「増えても厄介だ」といって去っていった
つまり、私には然程興味も無いという事だったんだろうと今に思う
「あ、ありが…とう」
振り絞って出した声は、みっともないくらいの鼻声で顔も涙でぐしゃぐしゃだ
「ひどい奴らだな!お礼なんていいよ!!あ、でも名前は聞きたいな!」
くるりとこちらを向いた彼は、アホ毛が特徴的で表情がコロコロ変わっていた
「私…りつ、前野りつです…」
「りつちゃんか!俺、松野カラ松!次男だよ」
「次男?兄弟がいるの?」
「へっ?俺たちの事知らないの!?」
自己紹介に次男と付けられ、じゃあ兄弟持ちなんだと尋ねれば目を丸くして逆に尋ねられた
こんな、最初の私達の出会い。
(後から聞くと、この辺りではとても悪ガキな6つ子で有名だったと知った)
それ以降、カラ松くんは私がからかわれてたりするたびに助けに来てくれた。
他の松野くん達と一緒に居ると戸惑うけど、カラ松くんから声をかけてくれたりしてすごく助かったり…仲良くしてたんだと思う
そんな私は珍しく中学2年まで、この赤塚で過ごす事が出来た
こんなに長期間同じ学校、地域に居たのは初めてで引越しが決まった時すごく泣いた
「やだよお…!!せっ、かく…仲良く、なったのにぃ゛…」
相変わらず泣虫な私
「大丈夫だって、離れても友達だろ!」
少し眉を歪ませながら不器用な笑いでそう励ましてくれるカラ松くん
友達、そう呼んでもらえた事はとても嬉しかったけど、私としてはこの頃からきっとこれは恋だと思っていたので後から少しモヤっとした
中学2年、私は赤塚の地を離れた。