novel

□見つめる瞳W
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「ちょっといいかな」




少しだけ曇った表情の貴方はそう言って俺に悲し気な笑顔を見せた。




この一言から、全ては始まった。











――――――……



少し撮影が早く終わり、今日はこの後久し振りのオフ。各自自由に過ごして良いという事で、俺は一人ブラブラと街を歩いていた。


サングラスをかけて帽子を深く被り、足元はサンダルという楽な格好。

ジーンズのポケットには財布と携帯だけを入れて出掛けていた。

周りをキョロキョロ眺めながらショッピングをしようか、ランチをしようかアレコレ悩んでいた。

しかし周囲の人々は気付いてるのか、チラチラと横目で俺を見てくる。

中にはカメラまで手にして撮影しようとしてる人も居た。


「…どこかゆっくり出来るところないかな」


人気の無さそうなところを探していると、後ろポケットに入れていた携帯がブルブルと震えて主張する。

携帯を開いて着信画面に表示された名前を確認した後、ボタンを押してその電話に出た。



「もしもし?どうしたの?」

「ユチョン、後ろ見て?」

「後ろ?」


言われるがままにくるりと後ろを振り返り、かけていたサングラスを外した。


するとそこに居たのはつい先程まで一緒に居たある人物。


「ユノヒョン!」


そう、ユノヒョンだった。

少し遠くに立っているヒョンは手を振って俺に存在を主張する。

「今時間ある?もし良かったらお気に入りのお店がこの近くにあるから、ユチョンにも教えてあげようと思って」

まるでユノヒョンは俺の考えていることを見透かしているかの様に話す。

俺は勿論OKの返事を返すと通話を切り、走って彼の元に近寄った。


 
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