novel
□抗えない想いU
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貴方を好きにならなければ、こんな想いはしなかったのに。
今となってはもう、貴方しか目に入らなくなってしまったじゃないですか。
自分の気持ちに気が付く前だったなら、この想いは単なる憧れですんだのに。
今はもう、自分ひとりではコントロールすることが難しい。
どうしても貴方の隣に立つと緊張してしまって、顔は固まり手の動きもぎこちなくなってしまう。
あれだけ練習した歌も、ふと視線が絡まり合えば一瞬にして頭が真っ白になってしまう。
ユノヒョン、僕は貴方に神経を全て費やしてしまうんです。
僕自身の中に深く眠る思いに、自らがハマって抜け出せなくなっていた。
自分自身の抗えない想いに 僕は毎日格闘していた。
「ユノ!」
ユノヒョンを呼ぶジェジュンヒョンの声が耳に入る。
読んでいた小説に集中僕の神経は一気に二人に向けられる。
「どうした?ジェジュン」
いつものように笑顔を向けながらジェジュンヒョンの方を向く僕の愛しく想う人。
当然ながら僕に向けられた笑みではないが、その朗らかな表情に僕までも視線で追ってしまう。
小さな声で何かを話し出す二人に、僕は胸の何処かで寂しさを感じながら視線を本に向けた。
本に目を向けてもその内容が頭に入ることはない。
意識はどうしても二人の声にばかり反応してしまう。
「…だからさ…」
「うん、それは…」
少しだけ聞こえるユノヒョンとジェジュンヒョンの会話にすら、無意識に耳を傾けてしまう自分自身に嫌気が差す。
「…ねぇチャンミン」
ふと隣から聞こえてきた声に少し驚いて顔を上げれば、心地良い手が僕の頭を撫でた。
「何ですか?ユチョンヒョン?」
耳元を触られ、くすぐったさに顔を歪ませると、そんな僕を見て楽しそうに笑みを向ける。
「何か暗いけど…どうかした?」
見ていないようで僕をしっかりと見ているユチョンヒョンには驚いてしまう。
優しく微笑んで声をかけてくれたのかと思いきや、彼は鋭い言葉を口にする。
そして僕を落ち着かせるかのように、体にそっと触れながら。
「…大丈夫ですよ。少し疲れただけです」
下手な僕の言い訳。いつもユチョンヒョンに指摘をされて、こう答えるしか出来ない。
そしてその意味を十分理解してくれているのか、彼もまた深くは突っ込まない。