novel
□見つめる瞳W
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「いつから居たの?」
「5分くらい前かな?歩いてたらユチョンを見つけてさ。後ろから観察してたんだよ」
目を細めてフッと笑うユノヒョン。盗み見なんてズルいよ、と笑いながら話をしていた。
すると突然彼は表情を一変させ、悲しげな瞳をして俺を見つめた。
「ちょっといいかな」
彼はそう言い、いきなり俺の手を掴んで路地裏にグイっと引っ張った。
「ユノヒョン…っ!?」
どんどん先に歩くユノヒョンとは裏腹に、上手く体勢を取れずおぼつかない足取りで歩く俺。
目の前を見ても彼の大きな背中しか見えず、どこに向かってるか何て全く分からなかった。
俺はされるがままの状態で支えとなるユノヒョンの手を握り、必死に付いていった。
そして細い道を数分歩いた頃、ようやく歩く足取りがゆっくりになった。
足元ばかり見ていた顔を上げると、目の前にはこじんまりとしたお洒落な二階建ての喫茶店があった。
『ちょっといいかな』
先程そう言ったユノヒョンの少し曇った表情が蘇る。そして何故か分からないが、俺の心の中に不安な気持ちが芽生え始める。
何も喋らずにヒョンを見つめていると、彼は繋いでいる手を強く握り、店の中に俺を引き入れた。
「こんにちわ。いつもの場所空いてますか?」
扉を開くとカランカランと鈴の音が鳴り、ユノヒョンの問いかけに優しく微笑むオーナーらしき女性が目に入った。
「あらお久し振り!もちろん空いてますよ、お好きにどうぞ」
上を指差しニコリと微笑む。多分ユノヒョンは何度か足を運んだことがあるのだろう。
そして彼の言う“いつもの場所”とやらに向かうユノヒョンの後ろを黙って付いていった。
階段を上り、角にある窓際のテーブルに腰をかけた。
この喫茶店の二階には広々とした大きな窓が設置してあり、そこから見える景色は絶景だった。
青い雲にモクモクとした入道雲、そしてビルの多い町並みを一望できるこの場所。
窓を開けてみれば気持ちの良い風が髪を靡かせる。
「…なぁユチョン」
その一言に、一瞬にして現実に戻された。彼に視線を向けてみれば目を伏せて話を始めるヒョン。
普段目を見て話すユノヒョンがこうして下を向いて俯く仕草をする、そんな時は決まってあまり良くない話をする時。
何を言われるか少し緊張しながらも、俺は心の中を落ち着かせる。
きっとユノヒョンにも何か考えがあって、今日俺を呼んだのだから。