POKEMON'S DREAM

□第1話 帰還
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〜♪〜〜♪――…



『ふう、どうだった?ミュウツー』

[あぁ。とても良かったよ]

『ふふっ、じゃあ今日はここまでね』

[ああ、気をつけてな]

『うん』

クリアはガラスケースの中にいるミュウツーに微笑む。ミュウツーも穏やかな表情をしている。


「いつもありがとう、クリアちゃん」

『カツラさん』

「ミュウツーも大分落ち着いてきたようだ。君のお陰だよ」

『いいんですよ。私も、少しでもミュウツーの力になりたいんで』

「そう言って貰えると本当に有り難いよ。
ところで、アツシは元気にしてるかね?」

『はい、マサラで研究したり、カントーを飛び回ったりと忙しくしてます(笑)』

「そうかそうか(笑)」

クリアとカツラは歩きながら話を進め、とうとうマサラへと続く水道の入り口に着いた。


『実は、この後レッドのバトルを見に行くんです』

「あぁ…挑戦者だね」

『はい。父さんも観戦に行ってて』

「ははっ、じゃあレッドは燃えるだろうなぁ(笑)」

『ええ、"絶対勝つ"って(笑)』
















「クリア!
オレがこいつらの気を引くから行くんだ!!」













「ピカを連れて…博士に伝えてくれ…!!」













行け!クリアァ!!!













そんなっ…


父さん…!!













レッドォ!!!























『…っ!はあっ、はあっ』 ガバァッ

クリアは目を覚まし、苦しそうに呼吸をする。


『はぁ…はぁ…、……ここは…』

呼吸を落ち着かせると、周りを見回す。


『……オーキド…研究所…?(私…戻って来れたんだ……)』




ザッ



『はぁ…、あ、ピカ…クロス…!』

「ピ…」

「ピィ…」

ボロボロのピカをクロスが支え、二匹は研究所の扉を引っ掻く。


「そうら、今、開けるからの!」


ガチャ


「ピカ!それにクロスまで!!そ、その傷はどうした!!」

オーキド博士は二匹の姿に驚く。そして…、


「クリア…!」

『おじい…ちゃん…』

ボロボロのウインの背に乗り、傷だらけの彼女の姿に目を見開く。


「い、一体何があったんじゃ!?
レ、レッドは…アツシくんはどうした!!二人は一緒じゃな…」

『う…』 ふら…

一人と三匹は力尽きてしまった――





『(そうだ…そこで気を失ったんだ…)うっ』ズキッ

クリアは額を押さえる。


ガチャ


「! クリア!目が覚めたか!!」

『あ…おじいちゃん…』

博士は彼女の側に座る。


「具合はどうじゃ?」

『…少し、辛い…かな』

「無理もない…あれだけボロボロだったからのぅ…。両腕、両足は動かせそうか?」

『うん…』

それぞれ、手首足首を中心に包帯が巻かれていた。彼女が動かすのを見て、博士は安堵の表情を浮かべる。


「何とか快方に向かってるようじゃのう。本当に良かったわい…。
…クリア、一体何があったんじゃ?お前がこれだけの傷を負い、しかも…ピカ、クロス、ウインしか連れて戻ってはこれなかったとは…。話せる範囲で話して欲しいんじゃ」

『実は…、……』

話そうと口を開くが、中々言葉が出てこない…。


『あ…あぁ…』

「クリア!」

不安定になる彼女を博士は宥める。


「…やはり…思いだせんか」

『ごめんなさい…』

「いや、仕方がないんじゃ。医者は、頭を強打してるため、記憶障害が起きるかもしれないと言っておったからな」

『…記憶…障害。
…でもおじいちゃん、これだけは言えるわ…。レッドと…そして父さんは……、手紙の挑戦者に負けてしまったの…。
それで……二人は私を逃がしてくれて…っ』

「クリア…」

『それだけしかわかんないっ…二人が何処で戦って…相手がどんな奴で……何があったのか………思い出せない…っ!』

「クリア…!」

涙を流す彼女に博士はそっと寄り添った。


『レッド…!父さん…!!』

「(頭の強打…それに、"ショックの強い出来事"……、クリアの記憶障害はこの二つが原因…)」

博士はクリアを落ち着かせ、彼女が戻った後にピカを連れて旅立った少年の話を聞かせた。


『少年…?』

「ああ。麦わら帽子を被った、お前より少し年下の少年じゃ」

『……』

「不思議なことに、ピカはその少年になついていていたんじゃよ。それに、お前のことも知っておったようで、"二人を探す旅に出たがったら、傷を完全に治してからにして欲しい"と念入りに頼んでいったわい」

『ええっ』

「全く…名乗りもしない失礼な少年じゃったが…ワシは信じてみようと思う。…そんな風に思わせる何かがあの少年にはあったんじゃ」

『(おじいちゃんが…信じた少年…)おじいちゃん、』

「ふぅ…、全く。分かったわい、お前はそういう子じゃったのう」

クリアの目を見た博士はやれやれと首を振る。


「そのかわり、今日一日は大人しくしてろ。少しでも、体力を回復させるんじゃ。
どれ、わしはエリカと連絡をとってくる」

『…エリカたちも知ってるの?』

「ああ、カスミを通して連絡したんじゃよ。…彼女等の情報網は心強いからのう」

『…そうだね!』

クリアは博士の言葉に頷き、また体を横たえたのだった。
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