POKEMON'S DREAM

□第5話 伝説のいし
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「…"つきのいし"というのを知っとるかの?」

「ええ。特定のポケモンを進化させるっていう…あの!?」

クリアも頷く。


「そうじゃ。じゃが、"進化のいし"と呼ばれるものは他にも四つ種類がある。
クリアちゃんなら全部言えるね?」

『は…はい、"リーフのいし"、"ほのおのいし"、"みずのいし"、"かみなりのいし"…ですよね』

「ウム、正解じゃ!
ところで、ふつうの"いし"は一度使うとなくなってしまうのは知っとるよね?」

「『はい』」

「ところがポケモンを進化させた後でも力を失わない特別な"進化のいし"がどこかにあるといわれとってな。昔から多くの人々が探し求めたという。
……。"クチバの伝説"というのはのう、二人共。

それらの"いし"、四種類がこのクチバ湾の奥底に…、沈んどるという言い伝えなんじゃよ!」

「ふーん」

『…、あの;』

「『それとレッド(さん)とどう関係あるんですか?』」

二人の反応に会長がズッコケる。


『(いや…待てよ…)』

「トホホ…クリアちゃんは気づかないのかい?

…コホン、この話はあくまで伝説。本当に"いし"などあるわけはない…と誰もが笑っとったんじゃ。
じゃが、それを覆す出来事が二年前に起きた。レッドくんによってじゃ!」

『あっ!そうか!ニョロボンへの進化!!』

「その通り!海へ落ちたレッドくんを救ったのは彼のニョロゾじゃ!ニョロボンに"進化"して!!」

その後も会長が話を続けるのだが…、


「クリアさん、ということは、伝説のいしがクチバ湾に沈んでるってことですよね?」

『うん!そういうことになるね』

「よーし!!クリアさん、行こう!」 グッ

『…へっ?』

「さあ、出発!」

会長の話が途中にもかかわらず、クリアの手を引いて歩き出したイエロー。


『い、イエロー;(ああ…後ろで会長がズッコケてるな)』

「ムホ!ま、まさか"いし"を取りに!?」

会長が慌てて二人を止める。


「"いし"は聖域に守られて、めったなことでは立ち入れんといわれとる!!聞いとるのかね!?

どうしても…」

『(イエロー全く聞いてないな…)』

そんな会長の横で、イエローはピーすけに糸をもっととお願いしている。


「準備が出来ました!行きましょう!!」

『わっ…イエロー!』

イエローはピーすけが作った浮き輪を持ち、またしてもクリアの手を引いて駆け出す。


『(やれやれ…)会長!情報をありがとうございます』

「ボクたち、その場所へ行ってみます。レッドさんに繋がるヒントが見つかるかもしれないから!!」

唖然とする会長を残し、二人は海へと向かったのだった――。







―――…







ザザ…ン



「んー、とはいったものの。こんなにクラゲがいるなんて聞いてなーい!!」

『あはは…』

そう、二人を乗せた浮き輪は既に、大量のメノクラゲたちに囲まれてしまったのだ。
しかも、二人を睨んでくる。


「ひえ〜。クリアさん平気?」

『うん、大丈夫よ』

釣り糸を垂らして海の中を探るイエローの横でクリアは図鑑を開いていた。


『メノクラゲの群れか…、伝説のいしは"聖域"に守られてるらしいから、もしかしてこの子たちが関係してるのかな…。聖域を守っているとか』

「う〜ん…、どうなんでしょう…。オムすけは大丈夫かな!?」

今、釣糸の先のボールの中にはオムすけが居るのだ。



びくっ



「『!』」

糸が引いた!


「ピーすけ!糸を伸ばして!下で何か起こったんだ!」

『一体何が…!』

イエローがオムすけの思考を読む!


「大変だ!オムすけ!そいつはドククラゲ!群れの親玉!!」

『ええっ!』

「ボールから出て対抗しないと…。
だああ」

イエローが釣竿をおもいっきり引き上げた!


ザア


「!」

『なっ…』

ドククラゲも海上に現れ、イエローたちに触手を巻き付けていく!


『くっ…大丈夫!?』

[ピ!]

『イエロー!』

「クリアさん!ピカ!!」

クリアはピカを腕に抱くと片方をイエローに伸ばす!

だが、



ドボーン



イエローたちは海中に引きずりこまれてしまった!


『(私たちを、何処に連れていく気…)』

暫く潜ると、ドククラゲはある一点で止まった。


『(あれは…)』

大量の岩が積み重なっていた!その一番下には…メノクラゲの子供が挟まっている!完全に身動きが出来ない状況だ。


『(もしかして、あの子を助けたくて私たちを…イエロー!)』

クリアとイエローが目配せする。そして、ボールを構えた!


『(水中で苦しいだろうけど、お願い!"かいりき"で岩を退かして!!)』

イエローはゴロすけ、クリアはウインを出す!
二匹の"かいりき"のお陰で岩がどんどんどかされていく!


「『(あと一つ…!)』」


ガコ!


『(やった…! イエロー!)』

イエローの息が持たなくなり、沈み始める!


『(二匹を戻して…)』

空のボールに戻した後、クリアはイエローを追う!


『(くっ…もう…少、し!)』

だが、息が続かなくなってくる。


『(……!)』













ゴポ…















クリアさん













「クリアさん!」

『う…』

クリアの顔をイエロー、ピカ、そしてメノクラゲたちが覗きこんでいる。


『はっ!ここは…?(息が出来る…)』

「良かったあ、気がついて…。
ここは、伝説のクチバの海底ドームです」

皆が連れてきてくれたみたいで、とイエローが説明してくれる。


『そっか…、ありがとう皆!』

クリアがクラゲたちを撫でると彼らも嬉しそうに擦り寄ってくる。


「クリアさん、あれを」

『! …"進化のいし"?』

イエローの示す先には、リーフのいしがあった。


『リーフのいしだけ?他の三つは?』

「ボクが見つけた時には、既に三つはなくなってました」

『そっか…(ニョロを進化させたいしもない…か)

ま、仕方ないね』

「はい。後、もう一つ発見があるんですよ!」

『?』

「上を見てください」

『…わあ!』

上には海水が流れており、その中をみずポケモンたちが優雅に泳いでいる。太陽光がさすところはキラキラと輝いていた。


『綺麗…!素敵なもの見れたね(笑)』

「はい!(笑)」


二人は暫くその景色を眺めているのだった――。



――…



帰ってきた二人は、会長に報告しに行った。


「なんと!言い伝えの場所はやはり存在しておったと!?おまけに四つの"いし"のうち三つがなくなっておったと〜!!

ぬう〜!ワシがこっそり戴こうとしておったのに!許せーん!」

「?」

『…;』

悔しがる会長はそのままにして、二人は考え始める。


「なくなった"三つのいし"を持っていったのは誰なんでしょう?」

『あんな海底まで行けるんだから…、そうとう実力のあるトレーナーだと思うよ』

「ですよね。"リーフのいし"だけ置いていったってことは…そのいしだけ必要なかったのでしょうか?」

『うん…、きっと三つのタイプでそれぞれ進化させたい子がいたのかも』

「なるほど。一匹に三つの"いし"が必要なんてことはあり得ませんよ…」


「『!』」


「いますよ、そんなポケモン!」

『うん、イーブイね…。
そして、数少ない珍種のイーブイを持っているトレーナーと言えば…』

「レッド…さん!?」

『…』 コクリ

「クリアさん…!」

『ええ…手掛かりの一つになりそうね』

二人は海を見つめる。




レッド…


貴方が、伝説の"三つのいし"を引き上げた張本人なの…?




その問いに答えるものはなにもいない。


押し寄せる波が響くだけだった――。
 

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