POKEMON'S DREAM
□第5話 伝説のいし
1ページ/1ページ
「…"つきのいし"というのを知っとるかの?」
「ええ。特定のポケモンを進化させるっていう…あの!?」
クリアも頷く。
「そうじゃ。じゃが、"進化のいし"と呼ばれるものは他にも四つ種類がある。
クリアちゃんなら全部言えるね?」
『は…はい、"リーフのいし"、"ほのおのいし"、"みずのいし"、"かみなりのいし"…ですよね』
「ウム、正解じゃ!
ところで、ふつうの"いし"は一度使うとなくなってしまうのは知っとるよね?」
「『はい』」
「ところがポケモンを進化させた後でも力を失わない特別な"進化のいし"がどこかにあるといわれとってな。昔から多くの人々が探し求めたという。
……。"クチバの伝説"というのはのう、二人共。
それらの"いし"、四種類がこのクチバ湾の奥底に…、沈んどるという言い伝えなんじゃよ!」
「ふーん」
『…、あの;』
「『それとレッド(さん)とどう関係あるんですか?』」
二人の反応に会長がズッコケる。
『(いや…待てよ…)』
「トホホ…クリアちゃんは気づかないのかい?
…コホン、この話はあくまで伝説。本当に"いし"などあるわけはない…と誰もが笑っとったんじゃ。
じゃが、それを覆す出来事が二年前に起きた。レッドくんによってじゃ!」
『あっ!そうか!ニョロボンへの進化!!』
「その通り!海へ落ちたレッドくんを救ったのは彼のニョロゾじゃ!ニョロボンに"進化"して!!」
その後も会長が話を続けるのだが…、
「クリアさん、ということは、伝説のいしがクチバ湾に沈んでるってことですよね?」
『うん!そういうことになるね』
「よーし!!クリアさん、行こう!」 グッ
『…へっ?』
「さあ、出発!」
会長の話が途中にもかかわらず、クリアの手を引いて歩き出したイエロー。
『い、イエロー;(ああ…後ろで会長がズッコケてるな)』
「ムホ!ま、まさか"いし"を取りに!?」
会長が慌てて二人を止める。
「"いし"は聖域に守られて、めったなことでは立ち入れんといわれとる!!聞いとるのかね!?
どうしても…」
『(イエロー全く聞いてないな…)』
そんな会長の横で、イエローはピーすけに糸をもっととお願いしている。
「準備が出来ました!行きましょう!!」
『わっ…イエロー!』
イエローはピーすけが作った浮き輪を持ち、またしてもクリアの手を引いて駆け出す。
『(やれやれ…)会長!情報をありがとうございます』
「ボクたち、その場所へ行ってみます。レッドさんに繋がるヒントが見つかるかもしれないから!!」
唖然とする会長を残し、二人は海へと向かったのだった――。
―――…
ザザ…ン
「んー、とはいったものの。こんなにクラゲがいるなんて聞いてなーい!!」
『あはは…』
そう、二人を乗せた浮き輪は既に、大量のメノクラゲたちに囲まれてしまったのだ。
しかも、二人を睨んでくる。
「ひえ〜。クリアさん平気?」
『うん、大丈夫よ』
釣り糸を垂らして海の中を探るイエローの横でクリアは図鑑を開いていた。
『メノクラゲの群れか…、伝説のいしは"聖域"に守られてるらしいから、もしかしてこの子たちが関係してるのかな…。聖域を守っているとか』
「う〜ん…、どうなんでしょう…。オムすけは大丈夫かな!?」
今、釣糸の先のボールの中にはオムすけが居るのだ。
びくっ
「『!』」
糸が引いた!
「ピーすけ!糸を伸ばして!下で何か起こったんだ!」
『一体何が…!』
イエローがオムすけの思考を読む!
「大変だ!オムすけ!そいつはドククラゲ!群れの親玉!!」
『ええっ!』
「ボールから出て対抗しないと…。
だああ」
イエローが釣竿をおもいっきり引き上げた!
ザア
「!」
『なっ…』
ドククラゲも海上に現れ、イエローたちに触手を巻き付けていく!
『くっ…大丈夫!?』
[ピ!]
『イエロー!』
「クリアさん!ピカ!!」
クリアはピカを腕に抱くと片方をイエローに伸ばす!
だが、
ドボーン
イエローたちは海中に引きずりこまれてしまった!
『(私たちを、何処に連れていく気…)』
暫く潜ると、ドククラゲはある一点で止まった。
『(あれは…)』
大量の岩が積み重なっていた!その一番下には…メノクラゲの子供が挟まっている!完全に身動きが出来ない状況だ。
『(もしかして、あの子を助けたくて私たちを…イエロー!)』
クリアとイエローが目配せする。そして、ボールを構えた!
『(水中で苦しいだろうけど、お願い!"かいりき"で岩を退かして!!)』
イエローはゴロすけ、クリアはウインを出す!
二匹の"かいりき"のお陰で岩がどんどんどかされていく!
「『(あと一つ…!)』」
ガコ!
『(やった…! イエロー!)』
イエローの息が持たなくなり、沈み始める!
『(二匹を戻して…)』
空のボールに戻した後、クリアはイエローを追う!
『(くっ…もう…少、し!)』
だが、息が続かなくなってくる。
『(……!)』
ゴポ…
クリアさん
「クリアさん!」
『う…』
クリアの顔をイエロー、ピカ、そしてメノクラゲたちが覗きこんでいる。
『はっ!ここは…?(息が出来る…)』
「良かったあ、気がついて…。
ここは、伝説のクチバの海底ドームです」
皆が連れてきてくれたみたいで、とイエローが説明してくれる。
『そっか…、ありがとう皆!』
クリアがクラゲたちを撫でると彼らも嬉しそうに擦り寄ってくる。
「クリアさん、あれを」
『! …"進化のいし"?』
イエローの示す先には、リーフのいしがあった。
『リーフのいしだけ?他の三つは?』
「ボクが見つけた時には、既に三つはなくなってました」
『そっか…(ニョロを進化させたいしもない…か)
ま、仕方ないね』
「はい。後、もう一つ発見があるんですよ!」
『?』
「上を見てください」
『…わあ!』
上には海水が流れており、その中をみずポケモンたちが優雅に泳いでいる。太陽光がさすところはキラキラと輝いていた。
『綺麗…!素敵なもの見れたね(笑)』
「はい!(笑)」
二人は暫くその景色を眺めているのだった――。
――…
帰ってきた二人は、会長に報告しに行った。
「なんと!言い伝えの場所はやはり存在しておったと!?おまけに四つの"いし"のうち三つがなくなっておったと〜!!
ぬう〜!ワシがこっそり戴こうとしておったのに!許せーん!」
「?」
『…;』
悔しがる会長はそのままにして、二人は考え始める。
「なくなった"三つのいし"を持っていったのは誰なんでしょう?」
『あんな海底まで行けるんだから…、そうとう実力のあるトレーナーだと思うよ』
「ですよね。"リーフのいし"だけ置いていったってことは…そのいしだけ必要なかったのでしょうか?」
『うん…、きっと三つのタイプでそれぞれ進化させたい子がいたのかも』
「なるほど。一匹に三つの"いし"が必要なんてことはあり得ませんよ…」
「『!』」
「いますよ、そんなポケモン!」
『うん、イーブイね…。
そして、数少ない珍種のイーブイを持っているトレーナーと言えば…』
「レッド…さん!?」
『…』 コクリ
「クリアさん…!」
『ええ…手掛かりの一つになりそうね』
二人は海を見つめる。
レッド…
貴方が、伝説の"三つのいし"を引き上げた張本人なの…?
その問いに答えるものはなにもいない。
押し寄せる波が響くだけだった――。