POKEMON'S DREAM
□第1話 帰還
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― 次の日 ―
「ほれ、クロスとウインのボールじゃ」
『ありがとう。二人共出ておいで!』
ボン!
[ピ!]
[ウォン!]
『ふふ、すっかり元気になって…良かった!』
クリアは二匹と戯れる。
「(あれ…?)」
博士はふと違和感を覚えたが、聞こうと思っていたことを聞くことにした。
「クリア、他の手持ちたちはどうした?」
『…多分、頭を強く打った時、モンスターボールをふきとばされてしまったんだと思うの。強い衝撃だったから…』
「そうか…。そんな状態でも…お前は本当に行くんじゃな?」
『はい。レッドと父さんと共に残りの手持ちたちを探しに行くわ。
…私、その少年のサポートをしようと思う。話を聞いたところ、彼は新人トレーナーのようだし…お互いに足りないところを補い合おうと思って』
あ、彼が良いっていったらだけど…と笑うクリア。
「…そうか!それを聞いて安心したわい。
クリア、先ずはトキワシティに行きなさい。そこにグリーンが来る筈じゃ。昨晩、エリカたちが少年と合流し、グリーンのもとに預けたそうじゃ」
『分かった。グリーンについて行けば良いんだね?』
「うむ」
クリアは頷くのを見たら、身支度を始める。
『(このグローブをずっとはめることになるなんてね…)』
絶縁グローブをはめ、足首まで隠れるブーツをはく。
「本当に…両手両足は大丈夫なのか?凄い火傷をしていたが…」
『うん。…実は、四ヶ所に氷の技を受けてしまってね。ウインの炎で溶かしたの』
「なっ…」
『でも良かった。今は包帯まいてるから良いけど、いずれは外すからね。両手はグローブて隠せそうだし、ブーツも用意して貰えたし…。
ありがとう、おじいちゃん』
「クリア…」
『!』
博士はそっと彼女を抱き締める。
「無茶をするなとは言わん…、だが、自分の体を大切にすることは忘れるんじゃないぞ」
『(おじいちゃん…)はい。いってきます』
クリアは応えるようにギュッと抱きつき、そっと離れる。
「気をつけてな。グリーンにもよろしく頼む」
『うん!』
クリアはウインに跨がり、トキワシティに向けて出発した。
―――…
トン
『ウイン、ありがとう!』
[ウォウ]
ウインは一通りクリアに戯れるとボールに戻る。
『(…ここに来るのも久しぶりだなぁ。イエローは元気だろうか)』
バサッ
『! あっ』
空を見上げると、橙の竜の姿が!そして、グリーンはクリアの目の前に降りて来た。
『久しぶりだね!グリーン!』
「…クリア、」
グリーンはクリアの包帯が巻かれる部分を見て言葉を切る。
『? グリ…きゃっ』
「……」
『グ、グリーン…?//』
急に抱き締められてしまったため、クリアは戸惑う。
「――った…」
『え?』
「クリアが…無事で良かった……!」
『グリーン……心配かけてごめんね』
「あぁ…、もう…こんな気持ちにさせるな」
『うん…』
グリーンは名残惜しそうにクリアを離すと、彼女をリザードンに乗せる。そして、飛び立った。
『ねぇ、グリーンは…敵の情報を得る事が出来た?私、怪我の為に"あの日"の記憶がないの…』
「それは、おじいちゃんからの書簡で知っている…。だが、今は敵の正体が分かった」
『! 誰なの!?』
「相手は―」
四天王だ
『四天…王…?』
「ああ。昨晩、ピカを連れた少年、イエローが襲撃された時に気づいたんだ」
『ええ!?そのイエローとピカは無事なの?』
「なんとかな。それで、強くなるために"修業"を始めたんだ」
『…だからグリーンのもとに…』
「…オレは、一度四天王と戦った事がある。その時のこと、話してやるよ」
『うん、お願い』
グリーンの話が終わる頃には、目的地に着いていたのだった。
『…そっか。話してくれてありがとう、グリーン』
クリアはリザードンを降りながら言う。
「それと、最後に一つ。そのキクコはおじいちゃんに怨みがあるらしい」
『ええっ!?』
「クリアもおじいちゃんに育てられたんだ、頭に入れておけ」
『わ…分かった。
……イエローは何処に?』
「あいつは―」
イエローは、キャタピーを捕獲し育てているようだ。グリーンが与えた課題である。
「明日の朝、様子を見に行く。その時会えばいいだろう」
『分かった!そっか、頑張ってるんだねイエロー…。よし!私もちゃんと傷治して頑張んないと!』
「その為にも今日は休め。飯の準備をするか…」
『うん!』
二人は焚き火をおこし、準備を始めた。
出来るまでの間、グリーンは考え事していたが、口を開いた。
「…なぁクリア。お前の手持ちたちならあの時の戦いの場所…覚えてるんじゃないのか?"力を使って"聞いてみ… !?」
『……』
「クリア…?」
グリーンは俯く彼女に声をかける。
『…あのね、グリーン。私……ポケモンたちの声が…聞けないの…』
「!?」
『戦いの場から逃げる間に…徐々に聞けなくなって…マサラに帰る頃にはもう…。
それに、クロスとウインも記憶がないみたいなの。案内出来るか確かめてみたけど…駄目みたい(苦笑)』
「クリア…」
『原因は、多分記憶障害と同じだと思うの』
「(レッドとアツシさんを目の前で倒され、救えない上に、その二人に逃がされた事…か)」
『あはは、そんな難しい顔しないで。私は大丈夫だよ!クロスとウインとの絆が無くなった訳じゃあないんだから(笑)』
「…そうだな」
『あ、そろそろいい頃じゃない?はい、グリーンの分』
「ああ」
『じゃ、いただきまーす!』
グリーンも手を合わせ食べ始める。だが、彼はふと手を止めた。
『グリーン…?』
「辛い時は言え。お前は…一人じゃないんだからな」
『っ…、うん、ありがとう…!』
クリアはグリーンに笑みを向ける。
夜は静かに過ぎてゆくのだった――。