POKEMON'S DREAM

□第1話 帰還
2ページ/3ページ

― 次の日 ―



「ほれ、クロスとウインのボールじゃ」

『ありがとう。二人共出ておいで!』


ボン!


[ピ!]

[ウォン!]

『ふふ、すっかり元気になって…良かった!』

クリアは二匹と戯れる。


「(あれ…?)」

博士はふと違和感を覚えたが、聞こうと思っていたことを聞くことにした。


「クリア、他の手持ちたちはどうした?」

『…多分、頭を強く打った時、モンスターボールをふきとばされてしまったんだと思うの。強い衝撃だったから…』

「そうか…。そんな状態でも…お前は本当に行くんじゃな?」

『はい。レッドと父さんと共に残りの手持ちたちを探しに行くわ。
…私、その少年のサポートをしようと思う。話を聞いたところ、彼は新人トレーナーのようだし…お互いに足りないところを補い合おうと思って』

あ、彼が良いっていったらだけど…と笑うクリア。


「…そうか!それを聞いて安心したわい。
クリア、先ずはトキワシティに行きなさい。そこにグリーンが来る筈じゃ。昨晩、エリカたちが少年と合流し、グリーンのもとに預けたそうじゃ」

『分かった。グリーンについて行けば良いんだね?』

「うむ」

クリアは頷くのを見たら、身支度を始める。


『(このグローブをずっとはめることになるなんてね…)』

絶縁グローブをはめ、足首まで隠れるブーツをはく。


「本当に…両手両足は大丈夫なのか?凄い火傷をしていたが…」

『うん。…実は、四ヶ所に氷の技を受けてしまってね。ウインの炎で溶かしたの』

「なっ…」

『でも良かった。今は包帯まいてるから良いけど、いずれは外すからね。両手はグローブて隠せそうだし、ブーツも用意して貰えたし…。
ありがとう、おじいちゃん』

「クリア…」

『!』

博士はそっと彼女を抱き締める。


「無茶をするなとは言わん…、だが、自分の体を大切にすることは忘れるんじゃないぞ」

『(おじいちゃん…)はい。いってきます』

クリアは応えるようにギュッと抱きつき、そっと離れる。


「気をつけてな。グリーンにもよろしく頼む」

『うん!』

クリアはウインに跨がり、トキワシティに向けて出発した。







―――…







トン



『ウイン、ありがとう!』

[ウォウ]

ウインは一通りクリアに戯れるとボールに戻る。


『(…ここに来るのも久しぶりだなぁ。イエローは元気だろうか)』



バサッ



『! あっ』

空を見上げると、橙の竜の姿が!そして、グリーンはクリアの目の前に降りて来た。


『久しぶりだね!グリーン!』

「…クリア、」

グリーンはクリアの包帯が巻かれる部分を見て言葉を切る。


『? グリ…きゃっ』

「……」

『グ、グリーン…?//』

急に抱き締められてしまったため、クリアは戸惑う。


「――った…」

『え?』

「クリアが…無事で良かった……!」

『グリーン……心配かけてごめんね』

「あぁ…、もう…こんな気持ちにさせるな」

『うん…』

グリーンは名残惜しそうにクリアを離すと、彼女をリザードンに乗せる。そして、飛び立った。


『ねぇ、グリーンは…敵の情報を得る事が出来た?私、怪我の為に"あの日"の記憶がないの…』

「それは、おじいちゃんからの書簡で知っている…。だが、今は敵の正体が分かった」

『! 誰なの!?』

「相手は―」
















四天王だ
















『四天…王…?』

「ああ。昨晩、ピカを連れた少年、イエローが襲撃された時に気づいたんだ」

『ええ!?そのイエローとピカは無事なの?』

「なんとかな。それで、強くなるために"修業"を始めたんだ」

『…だからグリーンのもとに…』

「…オレは、一度四天王と戦った事がある。その時のこと、話してやるよ」

『うん、お願い』

グリーンの話が終わる頃には、目的地に着いていたのだった。


『…そっか。話してくれてありがとう、グリーン』

クリアはリザードンを降りながら言う。


「それと、最後に一つ。そのキクコはおじいちゃんに怨みがあるらしい」

『ええっ!?』

「クリアもおじいちゃんに育てられたんだ、頭に入れておけ」

『わ…分かった。
……イエローは何処に?』

「あいつは―」

イエローは、キャタピーを捕獲し育てているようだ。グリーンが与えた課題である。


「明日の朝、様子を見に行く。その時会えばいいだろう」

『分かった!そっか、頑張ってるんだねイエロー…。よし!私もちゃんと傷治して頑張んないと!』

「その為にも今日は休め。飯の準備をするか…」

『うん!』

二人は焚き火をおこし、準備を始めた。
出来るまでの間、グリーンは考え事していたが、口を開いた。


「…なぁクリア。お前の手持ちたちならあの時の戦いの場所…覚えてるんじゃないのか?"力を使って"聞いてみ… !?」

『……』

「クリア…?」

グリーンは俯く彼女に声をかける。


『…あのね、グリーン。私……ポケモンたちの声が…聞けないの…』

「!?」

『戦いの場から逃げる間に…徐々に聞けなくなって…マサラに帰る頃にはもう…。
それに、クロスとウインも記憶がないみたいなの。案内出来るか確かめてみたけど…駄目みたい(苦笑)』

「クリア…」

『原因は、多分記憶障害と同じだと思うの』

「(レッドとアツシさんを目の前で倒され、救えない上に、その二人に逃がされた事…か)」

『あはは、そんな難しい顔しないで。私は大丈夫だよ!クロスとウインとの絆が無くなった訳じゃあないんだから(笑)』

「…そうだな」

『あ、そろそろいい頃じゃない?はい、グリーンの分』

「ああ」

『じゃ、いただきまーす!』

グリーンも手を合わせ食べ始める。だが、彼はふと手を止めた。


『グリーン…?』

「辛い時は言え。お前は…一人じゃないんだからな」

『っ…、うん、ありがとう…!』

クリアはグリーンに笑みを向ける。


夜は静かに過ぎてゆくのだった――。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ