BOOK(企画)
□一夜の蓮華物語
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カナはふと、勉強机から顔を上げた。
部屋の時計を見れば、既に八時過ぎ。
――そろそろお風呂に入ろうかな。
その時、コンコン…と控え目にノックされた。
両親は仕事で打ち合わせがあるとかで、家には誰もいないはず。
そもそもノックされているのは、部屋のドアではなく窓だ。
夜に窓からの訪問者。
心当たりは一人だけ…彼しかいない。
カナは喜んで鍵を開けた。
「リクオくんっ!?」
「はぁい☆」
そこには期待した彼ではなく、カナの知らない…綺麗な女性がいた。
「こんばんは!あなたが家長カナちゃん?」
「は、はい。どうして…?」
彼女はにこっと笑うと、「お邪魔しまーす」と窓枠を乗り越えた。
白に近い金髪のショートヘアで、ボーイッシュな感じの女性だ。
それでいてスタイル抜群で、一応着物なのだろうが、袖がなかったり裾が太もも丈だったり、露出度が高い。
彼女は部屋を眺めていた。
「へぇ〜。なかなか可愛い部屋ね」
「あ、ありがとうございます…」
「ところで」
彼女はカナの顔を覗き込んで、人懐っこい笑顔を見せた。
「カナちゃん、私とちょっとだけお散歩しない?」
「でも…知らない人に着いて行っちゃダメだって…」
「そっかー、残念。それじゃあ…」
彼女の声が低くなる。
「強行手段かなぁ」
「えっ…」
甘い香りがカナを包む。
酔いしれるように体の力が抜けて…カナの意識はそこで途切れた。
崩れ落ちるカナを、彼女がなんなく受け止める。
「さて…。宣戦布告して来いって言われたし、勿体ないけど、ちょっくら荒らしますか」
彼女は腕を振り上げた。
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