BOOK(企画)
□想いは果実に添えて
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牛頭丸が調理場にいるはずの馬頭丸を拾いに行くと言うので、つららは自然に肩を並べる形になる。
「どれだけ作るのか知らねーが、オレはいらないからな」
「誰があなたになんか…っ」
あげるものですか。
そう言おうとして、つららは止めた。
いらないと言われて素直に渡さないでおくのも、なんとなく癪な気がしたから。
それに、不本意だけども、お礼も言っていない。
「…ねぇ、牛頭丸。オレンジは好き?」
「はぁ?」
「だから、オレンジよ!蜜柑の仲間の果物!好き!?それとも嫌い!?」
自分でも何をムキになっているのか分からないが、つららはつい睨んでしまった。
「…柑橘系は嫌いじゃねぇ」
「そ。だったら、うんと苦いチョコでオランジェを作ってあげる」
隣の男にはぴったりだろう、とつららは内心で笑った。
「だから、いらねぇって言ってんだろ。つーか、おらんじぇってなんだよ」
「知らないなら、そのまま悩んでたら?」
「んだとコラ!」
牛頭丸の文句を右から左に受け流しつつ、つららはレシピを思い浮かべる。
甘酸っぱいオレンジに、ビターなチョコ。
例え拒否されても押しつけると心に決めて。
《後書き→》