BOOK(企画)

□その時まで
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二月十四日の朝。

「おはよう!わが愛しのファミリー達!」

教室に来た巻や鳥居らを、やたらキラキラした笑顔の清継が出迎えた。

「お、おはよ」

「あんた、朝から元気ね。つか、下心見え見え」

鳥居と巻の後ろから、カナがひょっこり顔を出した。

「おはよう」

「やぁ家長さん!今日も張り切ってるかい!?」

「張り切ってるのは清継くんっすよ…」

ぼやく島とその頬をつねる清継の横を通り過ぎて、カナ達はそれぞれの席に行く。

荷物を置いたカナは、可愛くラッピングされた包みを取り出した。

バレンタインの義理チョコ達だ。

「はい、清継くんと島くん」

「ありがとう!マイファミリー家長さん!」

「どうもっす」

カナは教室内を見回し、黒板の掃除をしていたリクオに声をかける。

「はいっ、バレンタインのチョコ」

「ありがと、カナちゃん」

背後の冷気を感じつつ受け取ったリクオは、あれ、と言った。

「これって…みんなのと同じ?」

「うん、そうだけど?」

それがどうしたの、と言う風にカナは小首を傾げる。

「…ううん、何でもないよ。ありがとね!」

「あ、それとね」

と言って、カナは鞄からもう一つ包みを出した。

それもチョコには違いないのだろうが…リクオ達が手にしているのより豪華だ。

それに、彼女が用意したにしては大人っぽすぎる、とリクオは思った。

「これ…あの人に渡して欲しいの」

「あ、あの人って…?」

「その、妖怪の主…に…」

頬を染めるカナ。

冷気が強くなる。

「で、でも…折角なら直接渡した方がいいんじゃない?」

リクオはついそんな事を言っていた。

「じゃあ、リクオくんがあの人を連れて来てくれる?」

「う…。それは、ちょっと…」

まさか「目の前にいるのが本人です」だなんて、言える筈がない。

「お願い!リクオくんしか頼れる人がいないの!」

手を合わせて懇願するカナに、リクオは頷いていた。


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