BOOK(企画)
□A snowman
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その辺に落ちていた枝で腕をつけた雪だるまは、子供の背丈くらいになった。
顔がないのが惜しいが、それでも夏実は満足げだ。
「ところで、なぜ雪だるまなんだ?」
黒田坊はなんともなしに尋ねる。
「んー。最初はこう、新しい雪に足跡をつけてたんです」
夏実がぎゅむっと踏み出すと、そこに足跡が残る。
これが面白いと言う。
「でも、せっかくなら何か作りたいなって思って」
「それで雪だるまか」
「はい!」
いつでも元気な彼女が、可愛らしいな、と思う。
フ、と笑って、黒田坊は夏実の頭に、ぽんっと掌を乗せた。
夏実は恥ずかしそうにして、前髪をささっと直す。
そんな仕草に、また黒田坊の頬が緩んだ。
祠の屋根にちまっと座った千羽は、冬の青空を仰いで、呟いた。
「平和だなぁ」
《後書き→》