BOOK(企画)

□俺のもの
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――苛々する。

最近、やけにつららにくっついてる奴がいる。

関東大猿会の新米組頭、猩影。

壊滅した組の再興のため、あちこちにアドバイスをもらって、奮闘しているらしい。

それは素晴らしいと思うし、三代目総大将として、できる限り助力する。

けれど、それとこれとは別だ。

どうして、つららにばっかり懐く。

体は大きいくせに、子供みたいな顔でつららにひっついて。

つららもつららで、楽しそうに笑ってる。

どうしようもなく、苛々する。

つららにあんな顔をさせるのは、自分だけでいい。

つららが笑いかけるのも、自分だけでいい。

これが…嫉妬なんだろうか。






その夜。

縁側でぼーっと月を眺めていたら、ふわりと羽織をかけられた。

「リクオ様、お寒くはありませんか?」

振り向くと、つららがにこりと笑った。

――あぁ、綺麗だ。

無意識だった。

気がついたら、つららを自分の胸に引き寄せていた。

「あ、あああの…リクオ様!?」

つららがじたばた暴れるが、離してやらない。

「なぁ、つらら。最近、猩影と仲が良いじゃねぇか。どんなこと話してんだ?」

「え、猩影くん…ですか?」

「やっぱいい」

自分から話を出しておいて、自分で遮る。

つららの口から他の男の名が出るのが嫌だ。

真っ赤になったつららの耳に唇を寄せる。

限界まで甘くした声で、熱く囁いた。

「つらら…お前は誰のしもべだ?」

「ひゃ…!だ、誰って…?」

あぁ、上ずったその声。

ものすごくそそられる。

「お前は…誰のものだ?」

ふっと息をふきかけて、耳たぶをはむ。

「んっ…やぁん…」

つららの体がぴくっと震える。

「答えろ、つらら。誰のだ?」

唇は耳たぶに添えたまま、ぺろりと舐めた。

「それは…ぁ…り、リクオ様…です…」

望む答えに、内心でほくそ笑む。

どこまでも従順なつらら。

「そうだ。身も心も、な」

他の男が近づくことは許さない。

自分だけのものだ――。



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