BOOK(企画)

□Sensual girl
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「夏実殿、夏実殿」

肩を軽くゆすると、夏実は瞼を重そうに持ち上げた。

「ん…お坊さん…?」

夏実は腕を支えに、ゆっくり起き上がる。

洋服の下の膨らみが見えそうになって、黒田坊は反射的に体を引いた。

彼は己を、本気で褒めたかった。

黒田坊の心情などつゆ知らず、夏実は目頭をこすっている。

「お坊さん、ごめんなさい…。私、つい寝ちゃって…」

「あぁ、いや。眠いのなら、無理せずに休んだ方がいい。今宵は帰ろう」

男心の指導をしようと思ったけれど。

正直なところ、自身の保身のためにも、その方が得策だ。

黒田坊が腰をあげかけた。

すると。

「やっ…」

夏実が身を乗り出して、黒田坊の衣にしがみつく。

ベッドから落ちかけた夏実を、黒田坊は思わず膝立ちで抱き止めた。

やはりこの娘は、成長した。

関わり始めた頃は華奢で細かった体。

今でも細いのに変わりはないが、それなりに柔らかく、女性らしい体になっている。

「行っちゃやだ…。一緒にいたい…」

こんな可愛い我儘も、子供の駄々ではなく、恋人に対する睦事のように聞こえてしまう。

黒田坊としても、己の従う妖怪の主の友人、という理由以上に、夏実を大切に想っているのも事実だ。

だがしかし。

彼女は成熟しきっていない。

ゆえに、無防備に見せつけられる肌に、ほとほと困るのだ。

「…まったく。この娘ときたら…」

よくこうも、魅惑的に育ったものだ。

悩みの種は、黒田坊にしがみついたまま寝てしまった。

これをどうやって引き離そうかと考えながら、黒田坊は深くため息を吐いた。


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