BOOK(企画)

□ロマンティックは突然に
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「あ、あのっ!」

よく晴れた日曜日の、竹下通り。

可愛い洋服のショップにちょうど入ろうとしたところで、カナは声をかけられた。

振り返ると、カナと同い年くらいの少年が三人。

それぞれ、慣れないながらも精一杯のオシャレをしている。

中央の少年が、ためらいながら口を開いた。

「あの…家長カナちゃんだよね?雑誌に出てる…」

「う、うん。読者モデルだけど…」

カナは戸惑いながらもうなずく。

「うわっ、マジ本物!?」

「すげー可愛い!」

少年たちは興奮した様子で、カナを口々にほめた。

――どうしよう。

カナは彼らに囲まれた状態で、それもショップの前だから、人目を引く。

「あのっ、握手してもいい?」

右の少年が、ずいっと迫ってきた。

「ずりぃ!じゃあオレも!」

「じゃオレも!」

左と中央の少年も、握手ができる形で手を出す。

「あ、ありがとう…」

握手くらいならいいかな、とカナは手を出した。

しかし。

その手を、横からつかむ別の手があった。

「カナちゃん!ごめん、遅くなって!」

カナは顔を上げて、目を丸くした。

「リクオくん…!?」

突然現れたカナの幼なじみは、少年たちに向き合った。

「ごめんね。ボクたち急いでるから」

リクオに握手を止められた少年たちは、ぽかんと口を開けている。

話についていけない彼らの前から、リクオはカナの手を引いて歩き出した。

「リクオくん、どうして?て言うか、珍しいね。リクオくんが原宿なんて」

リクオにしては、少し強引な感じがした。

カナは手を引かれながら聞いてみる。

「たまたまカナちゃんを見かけて、なんか困ってそうだったから。原宿に来たのは、ちょっと買い物にね」

来てよかったよ、と人の良さそうに笑うリクオは、いつもの彼だ。

気のせいだろうか。

と、甘い匂いが漂ってきた。

「カナちゃん、せっかくだし、クレープ食べない?」

「あ、うん!」

カナはリクオと一緒に、カップルの多いクレープワゴンの列に並んだ。



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