BOOK(企画)

□Screenと君
1ページ/2ページ


『ガァン!ガァン!』

前から迫る敵に向かって走りながら、彼は連続して銃を撃った。

落下物を素早い身のこなしでかわす。

不意に、背後に銃を構えた影が現れた。

彼の後頭部にぴたりと照準が当てられる。

しかし彼は、臆することなく、振り向きざまに急所を撃ち抜いた。

『ドンッ!』






「わぁ〜」

ドラミは感嘆の声をこぼした。

物騒な銃声が響いていたのは、二十二世紀の、ごくごく一般的なマンションのリビング。

現在、ドラミの兄の親友であるドラニコフ主演の、ガンアクション映画を鑑賞中であった。

ドラミはうっとりと手を組んだ。

「やっぱりニコフさん、かっこいいな」

「ふぅん」

つまらなそうにしているのは、ドラミを膝にはさんで後ろから抱えていたキッドだ。

いくら映画とは言え、恋人が親友にくぎ付けで、見とれているのだ。

彼としては面白くない。

キッドはすねたように、ドラミの肩に顎をのせて顔を覗きこんだ。

「あれくらい、オレだってできるぜ?」

「そっそうだけどっ!ニコフさんみたいに、普段物静かな人がやるから、かっこいいのっ!」

ドラミは顔が近いのに驚いたのか、赤くなって慌てた。

それに少し気をよくしたキッドだが、いまいち納得できない。

「あっ、今いいとこなの。キッド大人しくしてて」

映像を見れば、ニコフとヒロインの女性が出ていた。

ヒロインもスナイパーで、彼の演じる役とは敵同士。

確かこの辺りで、話題になっているニコフの名シーンのはずだ。

ちょっと遊んでやろう、とキッドは考えた。

映画に見入っているドラミの耳に、唇を寄せる。

ドラミは気づかない。

映像のニコフがヒロインとすれ違う――今だ。

『オレに狙われたら、無事では済まないよ』

ヒロインへの宣戦布告と口説き文句をかけた、ニコフの台詞。

それに被せて耳元で囁いたら、案の定。

「…な、何するのよ…!」

ドラミはぼっと顔を赤くして、素早く耳をおさえた。

「お、やっとこっち見た」

逃げた腰を、キッドはぐっと引き寄せた。

「他の男のことばっか見てたら、つまんねーだろ」

「他の男って…。映画だし、ニコフさんはお友達でしょ?」

「それでもダメ」

キッドはドラミを向かい合わせにさせて、抱き直す。

続きを観たいのか、ドラミがそっと頭を動かす。

キッドはすかさずドラミの首の後ろに手を当てて、自分の胸に固定した。

あとは音声が流れているが、一安心のキッドだった。



《後書き→》
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ