BOOK(企画)

□仁義なき女の戦い
1ページ/2ページ


「まさか馬頭の相棒の恋人とやらが、あんたやったとはなぁ。及川つらら」

「それはこっちの台詞よ。馬頭の彼女だって言うから、てっきり牛鬼組の妖怪かと思ったのに。まさか陰陽師なんてね」

にらみ合い、火花を散らす二人の娘。

その傍らには少年が二人。

「うわぁ。牛頭、これどうしよう」

彼女たちを交互に見た馬頭丸は、相棒に助けを求めた。

「知らねーよ。馬頭、てめーがなんとかしろ」

牛頭丸は半目で腕を組み、関わりたくないといった様子だ。

「そう言われても…」

困った馬頭丸は、一触即発の彼女たちに視線を戻した。

ことの起こりは、牛頭丸と馬頭丸が――というより馬頭丸一人が――互いの恋人を引き合わせよう、と提案したことによる。

馬頭丸は眉をはね上げた牛頭丸を説得して、つららを連れ出させた。

一方で、自分はゆらを引っ張って来た。

その結果。

妖怪のつららと陰陽師のゆらは、それぞれの立場に忠実に、ぶつかり合っている。

「そもそもあんた、奴良くんの金魚のフンやったんちゃうんか。他に男がおったなんて、知らんかったわ」

嫌味たっぷりに語尾を上げて、退魔破邪の札をちらつかせるゆら。

「余計なお世話よ。あなたこそ、自ら妖怪と関わるなんて。飛んで火に入る夏の虫ね」

嫌味を嫌味で返し、冷気を纏わせるつらら。

「牛頭〜」

「フン」

困惑する馬頭丸に、牛頭丸はばかばかしいとばかりに鼻を鳴らす。

「上等や!そこになおれ、妖怪!花開院家の名にかけて、滅したる!」

ばっ、と、ゆらは顔の前に札と式神を構えた。

「やれるものならやってみなさいな。凍らせてやるわ」

つららは冷気を吐息に集中させる。

「ちょ、ちょっと待った――」

「うるさい!あんたは黙っとき!」

慌てて止めに入った馬頭丸だが、ゆらに一蹴されて、頭を抱えた。

妖怪と陰陽師の、娘たち。

仁義なき女の戦いであった。



《後書き→》
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ