BOOK(企画)
□仁義なき女の戦い
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「まさか馬頭の相棒の恋人とやらが、あんたやったとはなぁ。及川つらら」
「それはこっちの台詞よ。馬頭の彼女だって言うから、てっきり牛鬼組の妖怪かと思ったのに。まさか陰陽師なんてね」
にらみ合い、火花を散らす二人の娘。
その傍らには少年が二人。
「うわぁ。牛頭、これどうしよう」
彼女たちを交互に見た馬頭丸は、相棒に助けを求めた。
「知らねーよ。馬頭、てめーがなんとかしろ」
牛頭丸は半目で腕を組み、関わりたくないといった様子だ。
「そう言われても…」
困った馬頭丸は、一触即発の彼女たちに視線を戻した。
ことの起こりは、牛頭丸と馬頭丸が――というより馬頭丸一人が――互いの恋人を引き合わせよう、と提案したことによる。
馬頭丸は眉をはね上げた牛頭丸を説得して、つららを連れ出させた。
一方で、自分はゆらを引っ張って来た。
その結果。
妖怪のつららと陰陽師のゆらは、それぞれの立場に忠実に、ぶつかり合っている。
「そもそもあんた、奴良くんの金魚のフンやったんちゃうんか。他に男がおったなんて、知らんかったわ」
嫌味たっぷりに語尾を上げて、退魔破邪の札をちらつかせるゆら。
「余計なお世話よ。あなたこそ、自ら妖怪と関わるなんて。飛んで火に入る夏の虫ね」
嫌味を嫌味で返し、冷気を纏わせるつらら。
「牛頭〜」
「フン」
困惑する馬頭丸に、牛頭丸はばかばかしいとばかりに鼻を鳴らす。
「上等や!そこになおれ、妖怪!花開院家の名にかけて、滅したる!」
ばっ、と、ゆらは顔の前に札と式神を構えた。
「やれるものならやってみなさいな。凍らせてやるわ」
つららは冷気を吐息に集中させる。
「ちょ、ちょっと待った――」
「うるさい!あんたは黙っとき!」
慌てて止めに入った馬頭丸だが、ゆらに一蹴されて、頭を抱えた。
妖怪と陰陽師の、娘たち。
仁義なき女の戦いであった。
《後書き→》