BOOK(企画)
□日本の風物詩〜桃〜
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「とりあえず、オレはこんな着替えが面倒くさそうなもん、着ねぇぞ」
理想が一気に崩れ落ちた。
「べ、別にキッドに直衣を着てほしいなんて言ってないわよ…!」
取り繕ったドラミだが、正直、落胆が隠せない。
がさつな彼に少しでも期待したのが間違いだった。
「着るんなら、一般的なタキシードでいいんじゃね?」
「へ?」
沈んでいたドラミの感情は、再び浮上させられた。
「いや、あれはあれで動きにくいか…」
どういう服が動きやすいんだろうな、なんて、キッドはぶつぶつ呟いている。
「あの…キッド?なんの話?」
「あ?だってこれ、日本の結婚式の格好なんだろ?」
“これ”と、キッドは人形を指さす。
何か勘違いしているらしい。
「えっと、そういう訳でもないんだけど…」
そこでドラミは、はたと気がついた。
“着るならタキシードでいい”?
“結婚式の格好”?
それはつまり――。
ぼっ、と頬が熱くなるのを感じた。
「それとも、お前はどうしても、この重そうな服を着たいか?」
「…し、知らないっ!」
ドラミは体ごとそっぽを向く。
「いや、お前が言い出したんだろ」
手のひらで顔を必死に冷ますドラミだが、ますます熱くなるばかりだ。
内裏雛を連れて参る嫁入りの先は――はてさて。
《後書き→》