BOOK(企画)

□初恋苺
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浮世絵中学校、昼休み。

よく晴れた空の下、屋上でランチタイムを過ごす生徒は多かった。

清十字団もいつもの面子で輪を作っている。

お楽しみの弁当箱を開けて、リクオは感嘆の声を上げた。

「あ、苺だ…!」

「ほんとだぁ。いいなぁ、リクオくん」

隣からカナも覗き込む。

冷たいが色彩のキレイなリクオの弁当。

その中でも苺は、隅っこにありながら特別に鮮やかな色艶をしていた。

「カナちゃん、苺好きなの?」

「うん!なんか苺って、お弁当に入ってると嬉しくなるよね」

にこにこしながら、カナは自分の弁当箱を開ける。

「あっ…」

その中にはさくらんぼが可愛らしく鎮座していた。

「あはっ。カナちゃんのお弁当にも、果物が入ってたね」

「うん。でもやっぱりお弁当には苺かなぁ。さくらんぼも嫌いじゃないんだけどね」

「じゃあ、ボクの苺をあげるよ!」

リクオは箸で苺を掴むと、そのままカナの口元に持っていった。

カナは慌てて首を振る。

「い、いいよ!リクオくんが食べて!」

「いいから、いいから。はい、あーん」

「え、ちょ…」

上体を反らして避けるカナだが、それに合わせてリクオが腕を伸ばすから、結局変わらない。

「あんたら、なに新婚みたいなことやってんの」

巻から薄目で突っ込まれる始末。

「そ、そんなんじゃないから!」

リクオの箸はなおも追いかけてくる。

ついに逃げ場がなくなって、カナはぱくんっとくわえ込んだ。

「美味しい?」

「う、うん」

シャーベットのようにシャリシャリしてたのは気にしないことにしよう。

太陽みたいな邪気のないリクオの笑顔に、結局はほだされてしまうのだ。

苺のように甘酸っぱい気持ちは、初恋の続きなのだろうか…。



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