BOOK(企画)

□しょこらーと
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「ねぇつららー、これなぁに?」

リクオはこてん、と首を傾げた。

言葉がだいぶ達者になった彼は好奇心旺盛で、なんにでも興味を示す。

小さな体で敷地内を走り回っては、妖怪たちにいたずらをしかけるのだ。

リクオはかくれんぼの隠れる場所を探しに炊事場に入った。

誰もいないかと思いきや。

居合わせたつららにたしなめられてしまった。

すると彼は、反省どころか疑問を投げかけたのだ。

リクオが指差しているのは、机の上の四角い箱だった。

「これはチョコレートですね。誰が置いたのかしら」

「しょこらーと!?ボクだいすき!!」

つららは勝手に食べてはいけないと思いつつも、リクオのキラキラした期待の眼差しに負けてしまった。

「では、一つ頂きましょうか」

「やったぁ!」

箱を開けて、一粒ずつ紙に包まれたそれをつららはリクオに手渡す。

リクオは嬉しそうに口に放り込んだ。

「いかがですか?」

しかし、その表情は次第に曇っていく。

「これ…へんなあじするぅ〜」

「えぇっ!まさか毒が!?」

つららも一粒取って食べる。

…すると。

「毒…ではなくて、お酒が入っているんですね」

つららはほっと胸を撫で下ろした。

「おさけ?」

「すみません。リクオ様には少し早かったですね」

つららが湯飲みに水を入れて差し出すと、リクオは一気に飲み干した。

「大丈夫ですか?」

「うん。ね、おさけってボクはたべちゃだめなの?」

正確には飲む、だが。

「そうですね…。少なくとも、リクオ様が三代目を継がれるまでは」

「じゃあボク、さんだいめになる!」

「まぁ」

つららは目を丸くした。

「それでねっ、つららとずっといっしょにいるんだ!おとーさんとおかーさんみたいに!」

と、鼻息を荒くするリクオ。

つららは優しく微笑んだ。

「それはそれは、楽しみにしていますね」

「うんっ!」

この後、彼は鬼役の小鬼に見つかってしまうのだった。



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