BOOK(企画2)
□夏の日の流しそうめん
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小さい頃から、幼なじみに対する仄かな灯が、リクオの中にはあって。
ずっと消えることなく、リクオの世界を照らしてきたのも確かで。
けれど、すぐに結婚に繋がるかと言えば、それは難しい話な気がする。
「……くん、リクオくん?」
呼ばれて我に返れば、当の幼なじみが至近距離にいて、リクオは反射的にのけぞった。
「カ、カナちゃん、どしたの?」
心臓が口から飛び出るとはこのことだ。
「おつゆ、薄くなっちゃってると思うから、交換するかなぁって」
カナは不思議そうに首を傾げる。
「あ、あぁ、うん。そうだね。ありがとう」
リクオはカナの持っていた盆に自分の器を乗せて、新しい器を取る。
「リクオくん、おそうめんまだあるからね!」
リクオに笑顔を残して、カナは手伝いに戻って行った。
奴良組の面々や清十字団メンバーに器を配る彼女を見つつ、リクオはそうめんをずるずるすする。
いつの間にか、隣から祖父が消えていた。
《後書き→》