BOOK(企画2)
□肝試し
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「うぅ、嫌だなぁ〜」
カナは自分の体を、ぎゅっと抱きしめた。
夏休みの課題で定番と言えば、読書感想文だ。
おそらくこのためにしか読まないであろう本を、わざわざ買うのももったいない気がして、図書館で借りた。
課題を書き終えるのが、返却期日の夕方になってしまって、カナは急いで家を出た。
そこまではいい。
「なんで近道しようとか考えちゃったんだろう……」
狭い道の両側には木が生い茂り、家はなく、一本だけある街灯は不規則に点滅している。
まだ日没前のはずなのに、枝葉が両側から覆いかぶさって、薄暗い。
こんな所を一人で通るなんて、肝試しだ。
「大丈夫、ただ普通に歩くだけ……」
わざわざ声に出すのは、黙っていると何かが聞こえてきそうだからだ。
生ぬるい風が吹く。
植物がざわざわと鳴る。
掴んだ自分の腕が冷えていて、カナは何度も撫でた。
一歩一歩、意識的に足を動かす。
その時。
ぽん、と、何者かに肩を叩かれた。
「――ひ……っ」
限界だった。
カナはトートバッグを、中に借り物が入っていることも忘れて、全身で振り回す。