BOOK(企画2)

□肝試し
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「うわっ!」

何者かの驚いた声。

当たった感触はない。

「カナちゃん、落ち着いて。ボクだよ」

「……へ?」

壊れかけた街灯を頼りに目をこらせば、幼なじみが眼鏡の位置を直していた。

「リクオくん……!」

一気に体の力が抜けて、泣きそうになった。

「カナちゃん、どうして“こんな所”に?」

「図書館に、今日までの本を返しに行こうとしてて。リクオくんは?」

「ボクは、その、変な気配を感じて、見回りに……」

えへ、と後頭部に手を当てるリクオ。

変な気配、見回り。

リクオの口から発せられた単語は、カナの体温を下げさせた。

「やっぱりなんかあるんだ!こんな所、早く行こう!」

カナはリクオの腕にしがみつき、ぐいと引っ張る。

ところが。

まるでカナたちの足を止めるように、粘着質な風が二人に絡みつく。

「や、やだっ、何これ……っ」

「これは――――やべぇな」

リクオの声音が変わり、カナははっと顔を向けた。

腕を素早くほどかれ、代わりに肩を抱かれる。

「来てみて正解だったが、厄介さは予想外だ」

厳しいと自ら言っているのに、態度は毅然としている。

この彼は、幼なじみで同級生の男の子じゃない。

妖怪の主、あるいは魑魅魍魎を率いる総大将――。

「リクオ、くん」

「カナちゃん。もう少しだけ耐えられるかい?」

耐える、それは。

「怖い、けど……。リクオくんがいてくれるなら……っ」

必死の思いで見つめれば、彼らしい不敵な眼差しで頷かれた。

「さぁて。これぞ本当の肝試しだ。お化け役は、さっさと退散すると相場が決まってるんでね」

カナはごくりと唾を飲む。

カナの前に立ったリクオの向こうで、風が形を成した――。



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