BOOK(企画2)
□朱夏流水
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二人の指を離れた石は、水面の上を滑る。
最初の着水位置は、カナが一人で投げた時より遠い。
それそのものに意志があるかのように、軽やかに水面を跳ぶ。
四、五、六……。
最後には、ゆるやかに波紋が広がった。
「で、できた……。できたよ、リクオく……っ」
カナは思わず振り向いて――息を止めた。
近い。
視界が彼で埋まっている。
リクオも状況に気づいたらしく、目と口を丸くしている。
「……う、わああぁっ!」
「ひゃあ!」
同時に叫んで、同時にパッと離れた。
「ごご、ごめんっ!余計なことして……!」
「う、ううん!」
カナは頬に両手を当てた。
ちらりと横を見れば、リクオはバツが悪そうに首筋をかいている。
さらにいたたまれなくなって、カナは周りに視線を動かした。
何か、この空気をごまかせるもの――。
自然と目につくのは、河原に広がる大量の小石。
これしかないけれど、黙っているよりは、きっと、いい。
「ね、ねぇっ。もう一回やらない?」
「へ!?あ、うん、そうだねっ」
お互い、何かこう……わざとらしい。
しかし、二人ともそこには触れずに、それぞれ石を拾った。
「いくよー。せーのー……――せっ!!」
リクオの合図で、揃って腕を振る。
流れる水の上、夏の暑気を払いながら、二つの投擲物は並んで駆けていった。
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