西浦流星群
□零れ出す
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「もう限界だ。田島。」
薄暗い道で、花井はそっとそう呟いた。
「…トイレ行きたいの?」
花井の言いたいことは痛いほど伝わった。オレ、カン良いもんね。
でも、あえて的外れなコトを言ってみた。
だって。嫌じゃん。
声に出したらホントになっちゃう。
そんなの嫌じゃん。
「そうじゃなくて!」
花井はわざわざ訂正してくれた。優しいな。
「俺達、もうムリなんだよ…田島だって、ホントは気がついてんだろ?」
わかってる。わかってるよ…わかってるけど!
「ここらで別れよう。」
こんな花井の言葉もちょっと聞き慣れた。
だって、一昨日から数えると、丁度五回目の別れ話だもん。
「そだなっ!もうすぐ家に着くし!でも花井、どーせ寄ってくんだろー?今日はバンメシ、なんと唐揚げなんだぜー!花井の分も母さんに頼ん「田島!!!!」
花井の大声で、静かになった。
「分かってくれよ…」
「…嫌だよ。」
オレは真っ直ぐに花井を見詰めた。
「オレ、花井と別れんのヤだよ!」
「た、じま」
「だってせっかく思いが通じて、両思いになれて、楽しくて!…もっと…もっと一緒に居たいじゃん!」
今までの4回みたいには、はぐらかせられそうもなかったから、本音を伝えた。
そしたら、いつだって花井は笑って頭をポンって軽く叩く。そしたら、いつも通りに戻れる。
「ごめん。田島。」
でも今日の花井の反応はいつもとは違うくて。
花井は目にイッパイ涙を溜めて、オレに謝った。
「元々ダメだったんだよ。この恋は。実るべきじゃなかったんだよ。」
マチガエテ実らせてしまった思い。
「だからもう、」
「“サヨナラ”しよ。」
膝が笑う。
イヤだ。ヤだよ花井。
友達に戻りたくない。
友達になんか…戻れない。
*