西浦流星群
□12月14日
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朝、通学ラッシュのちょっと前に登校する。
私の好きな時間帯だ。
まだ疎らな人影の中に、真っ黒な後ろ姿を見付けた。
あ。
――阿部君だ。
私服OKの西浦高校では、学ランを着てくる人は、割と少ない。
そんな中、髪の毛も何もかも真っ黒な彼の後ろ姿は、目立つ。
だからいつもスグにわかった。
でも今日の彼の後ろ姿は、どこか違和感を感じた。
何が足りないような、何が多いような。
とにかく、どこかが違う。
よく目を凝らして、金曜日の阿部君の残像を思い浮かべながら、いつもとの違いを見付けた。
あ。
嘘。
阿部君の首に巻かれていたのは、いつものあの温かそうな真っ黒いマフラーじゃなかった。
首に巻かれていたのは。
私の、“いかにも手作り”な真っ赤なマフラー。
だった…
*