幸福論


□Autumn
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まあ、そんなこんなで。

あっという間に夏休みが終わってしまった。

「あーあ!終わっちゃったなあ」

「部活ばっかだったぜぃ」

夏休み明けの学校は、まだお休み気分が抜け切れてない生徒が多い。

目の前に居るこの2人もそうだ。

ちなみに茜のリベンジデートは成功した模様。

今度こそは2人きりで出掛けたらしいが、付き合うまでには発展しなかったとか。

しかし見てる分には想い合ってるのが丸分かりだ。

勿論、それを教えるような野暮な真似はしないが。

「茜、宿題やったのかよぃ?」

「当たり前じゃん!」

「どうせ綾里の写したんだろぃ?」

「ちゃんと自分でやったよ!」

「本当に自分でやったのか?」

「ジャッカルまで!そういう2人はどうなの?」

「「………」」

テニス部は皆で課題をやるらしい。

そのスパルタさが、2人の様子から伝わってくる。

そういえばテニス部といえば、男子はインターハイ優勝だったそうだ。

常勝立海の名は伊達ではない。

女子は予選で敗退。

新学期からは新体制での部活が始まるんだそう。




「あ」

「鈴蘭?」

「何だよぃ」

「どうした?」

「ごめん、先生に呼ばれてたの思い出した」

「綾里なんかしたのか?」

「お前じゃねえんだから」

「でも珍しいね。鈴蘭が呼び出しなんて」

「とりあえず行ってくる」

…なんだろうなあ。

嫌な予感がする。

















「綾里!頼む!!」

「…何故私なのですか?」

「成績も良いし、面倒見もいいお前ならと思ったんだ。部活にも入ってないしな」

「私にはとても」

「そう言わず頼むよ!お前なら絶対当選出来ると思うんだよ」

ここは職員室。

あのまま呼び出されたことを忘れていればよかった。

呼び出された私は、担任に生徒会長に立候補しろと言われているのだ。

何処の学校でも、余程のカリスマ性が無い限り1年生での生徒会長は務まらない。

だが立海は生徒会の認知度の低さから、毎回立候補者すら居ない状況なんだとか。

そもそも認知度が低い以前に、立海の生徒会は仕事量が殺人的だと言われているのだ、自分から立候補する人は勇者に違いない。

「頼む!この通りだ!」

…勘弁してくれ。

頭を深く下げた担任を前に、ため息が漏れた。

「っていうかもう立候補届け出しちゃったんだよな!」

「…は?」

「お前ならやってくれると思ったしさ、生徒会顧問の平林先生の推薦もあったからよ」

「平林先生?」

名前は聞いたことがあるけど、直接話したことはない。

確か彼は進路指導や生活指導などの教諭であり、生徒会顧問だった筈。

話したこともないのに、何故推薦されたのだろうか。

って、それよりも。

聞き捨てならない言葉が聞こえた気がする。

「もう立候補届けを出した…?」

「おう!もう受理されてるぞ!」

「何でそんな事したんですか!」

「わ!悪い!」

…何かの間違いだと思いたい。


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