幸福論


□sping3
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「神様仏様ッ!最後の年は全員一緒のクラスになりますよーに!」

「全員一緒は無理だと思うけど」

「悠ったら夢がない!せめてこの3人だけでもいいからお願いします!」

「いや、それも難しいと思うけどね」

「鈴蘭までえ!」

去年と同じ様に入学式の挨拶と始業式を終えた私は、茜と悠と共に中庭でクラス発表の時を待っていた。

毎年恒例となったクラス発表も最後の年となれば気合の入りようも変わって来る。

茜と同じ様に神頼みをする生徒があちらこちらに見える。

私も神頼みをするとするならば、神様、幸村君と同じクラスはもう嫌です。

「心外だな」

「……イツカライタンデスカ」

「神様仏様ッ!辺りだね」

「つまり始めからですね」

「フフフ、気付かない君が悪いんだろう?」

この世には神の上に立つ者が居る。

そう、それは幸村精市。

神の子なんて誰が名付けたんだ。

そんな可愛いものじゃない。

「鈴、あんた勇者だわ」

「…え、口走ってた?」

「口走ってたも何も、駄々漏れだったけど」

幸村君、そんなに綺麗な笑顔で此方を見つめないで。

心臓が止まってしまいそうだから。

「精市、それくらいにしたらどうだ?綾里を失うのは俺達にとって得策ではない」

「やだなあ、蓮二。俺は綾里さんと遊んでるだけだよ」

「綾里と遊んでいる、のではなく綾里で遊んでいるのだろう」

「そんな事無いよね、綾里さん」

「………」

「ほら見ろ、泣いているだろう」

何なんだ、合宿あたりから抗えなくなったこの上下関係は。

3年目にして色々と壊れてきたような気がしてならない。

とりあえず幸村君から逃げた先の柳君の背中。

背中越しにチラリの見えてしまったノートの中に、精市の握る綾里の弱み、という走り書きが見えて思わず固まる。

そこから先は怖くて見れなかった。

「おーい、もう発表始まるぞー」

遠くで私達を呼ぶ桑原君が天使に見えて、私は一目散にそこに逃げた。


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