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□腕の中が温かくて
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大好き。
でも、それだけでは駄目です。
僕は、僕は

腕の中が温かくて



「火神……くん」

部活が終わり、僕はいつものように体育館の入口に立って火神君を待っていた。
いつもなら走って来てくれる火神君はいつまでたっても姿を見せてくれなくて

捜しにでたのが間違いだった。

体育館の裏。
火神君は告白されていた。
僕と火神君は恋人同士で、でも同性だから表向きにはできない
今、火神君に告白している子は
とても可愛い子。

後ろからでもわかる。
火神君の事が大好きな人。

敵わない。

僕はふとそうおもって、頬に流れる涙を拭った。
僕はどうあがいても男。
柔らかい胸もなければ、子供を産める器官もない。

体育館の影になって、僕はその場を離れた。

「わりぃ黒子遅くなって、待ったか?」

「いいえ、だい、じょうぶです」

いつもどうりに。
そうすれば、ばれない。

「早くマジバいきまし……」

「黒子、泣いた?」

火神君はそっと目線を合わせて
目元を拭ってくれた。
その優しい気持ちはいつか…

「な、何言ってるんですか?早く行きましょう。」

もう。終わりなんでしょう?

心の中で呟きながら歩き出す
すると、歩き出した僕の腕を火神君はいきなり掴んで走り出した。

「か、がみ、くん?」

「俺の家行くからな」

火神君は有無も言わしてはくれなかった。



「黒子……」

家の中に入った途端、火神君は僕を抱きしめた。
火神君の腕の中は温かく
とても安心出来る場所。

でも今は苦しい。

「黒子、どうした?なんかあったんだろ?」

優しい柔らかい声。
僕は涙を堪えるのに必死だった

「黒子……」

「僕は、僕は狡い人間です」

「へ?くろ……」

「火神君の傍に居たくてちゃんと見てほしくて」

「黒子」

「誰にも気付かれないから、僕はよくズルをします。」

「黒子、黒子」

「誰にも渡したくないからって縛り付けることしか出来ないんです」

「迷惑だってわかっていながら君を離すことが出来ないんです」

重荷、ですよね。
僕は涙を流さないで言った。
火神君、離れて。
そうしないと僕は君をがんじがらめに縛り付けてしまうから。

「黒子、黒子、聞けよ、黒子」

「いやです、いや、いや」

「大好きだ、黒子離れんな安心しろ断ったから」

視界が真っ白になる。
え?

「居ただろ?体育館裏。」

「なん、で、どうして」

「お前は俺の影だ、恋人だ、わかるぜ?普通」

駄目だ。
涙が

「愛してる、黒子、離れんな」


その言葉が、僕を安心させる


「は、い火神君」

大好きです


end
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