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□夢で終わらせて
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君の全てに依存していて。
離れたくなくて。
我が儘になって
涙が止まらなくなるんだ。



夢で終わらせて


「―――っ!」

真っ暗な室内で自分の荒い息が響く。
泣き叫びたい気持ちを押さえながら、鳴咽を殺して情けなく涙を流す。

火神君が、僕を、いらないと
火神君が、さようならと

夢、夢なのに。
怖くて、辛くて、悲しくて。
同性同士の恋なんて世間は冷たくて認めてなんかくれない。
火神君は僕と違って世界へ行ける人だから。
いつか重荷になるんじゃないかって。
不安が消えてくれない。
ポーカーフェイスがつくれない。
涙と鳴咽が止まらない!

「いやですっ……っ見捨てないで火神っ、君ぅ……っ」

届くはずなんかないのに。
繰り返し繰り返し火神君を呼ぶ
それに答えるように携帯が着信を告げる。
午前零時。
こんな非常識な時間に電話してくるのは彼しかいない。

「……はい。」

「黒子?起きてたのか」

優しい火神君の声。
僕は声がふるえないように必死に堪えた。

「どうしたんですか?こんな時間に」

「いや…、なんかお前に電話しなきゃいけねぇような気がして」

鳴咽が漏れる。
優しい優しい火神君。
大好きな火神君。

「黒子?おい、泣いてんのかよ!」

「……火神君は、僕をいつまでも必要と、してくれますか?」

いらないと。
本当に存在を無視したりしませんか?

火神君、火神君。
縋るように、祈るように泣いて泣いて。
火神君からは返事が来なくて。
不安がつのっていく。

「火神………く」

ブツン。

着信の切れた音。
僕は泣く事も忘れて悲しみに浸る。
火神君?火神君。
カタカタと震え出したカラダ。
あの時には感じなかった孤独感と空虚感。

夢が現実になる。
あれは正夢?

暗い思考の中、コンコンと窓を何かがぶつかる音がした。
フラフラとかぎに手をかける。

「黒子!」

「か、がみ君?」

暗い道に蛍光灯の明かりに輝く赤。
僕の、太陽。

「黒子、俺、ここにいるぜ?」

優しい、僕に聞こえるか聞こえないかの小さい声。
でも、嬉しくて。
急いで階段を下がって、外へ飛び出す。
涙は止まらない。

「火神、君っ!」

「黒子。」

大きな腕が僕を包みこんでくれる。

「火神君、火神君……っ」

「ばーか、余計な心配すんなよ俺、ぜってぇお前手放せねぇからよ」

ありったけの力で抱きしめられて苦しいけど。
嬉しいから、幸せだから。

「大好き、です。」

「俺も。」


ひとりぼっちの世界なんか
夢で終わらせてください。


君と二人きりの世界が、大好きだから


end
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