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□そっと、ぎゅっと。
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朝、少し暖かくなってきた頃。

僕はその背中に抱きついた。


そっと、ぎゅっと。


「火神君。」

朝、でっかい人が目の前にいて
その人がいきなり抱きついてきたら
驚きます。

「ど、どうしたんですか?」

「別に。なんでもねぇよ。」

ぎゅぅぎゅぅと離すまいとでも言ってるかのように抱きしめてくる火神君。
あったかくて幸せだけど、

「本当に、どうしたんですか?」

「・・・・・、すっげぇ、お前に会いたくなったから。」

ウソ、はついてはいません。
口調が淡々としてる。

「・・・・・。」

だから、僕は頬を熱くした。
よくこんな恥ずかしいことを平気で言えるな、って思って。

「・・・・僕も会いたかったです。」

このままの状態でいれるわけがなく。
僕たちは学校へ向かった。




その日の放課後。

朝の余韻を消すように、それは突然だった。

「・・・・・。」

前よりも数段レベルUPしてる火神君。
ゾワゾワとわからない物がせりあがって来る。

光は強すぎたら、影を取りこんでしまう。
影は、残らない。

「か・・・かがみ・・・。」

「こら、黒子!早く練習しろってんだよ!」

「あ・・・・、はい。」

キャプテンの声が鼓膜を震わせる。
暗くなった世界は断ち切られ、安心して息を吸った。

でも、ボールを持つ手の震えだけは消えなかった。
消えては、くれなかった。



「・・・・はぁ・・・。」

家に帰ると盛大にため息が漏れる。
自分の力不足からくる不安。
彼を疑ってしまう心。
すべてがいやになってしまう。
彼のあったかい気持ちが欲しくなる。

「・・・・会いたい。」

どこかへ、行ってしまっていないか確かめたい。
僕は朝とは違って寒くなった外をジャケットも着ないで走り始めた。

「はぁ・・・はぁ・・・、いない?」

火神君のアパートは明かりがついていなくて、チャイムを押しても出ない。
僕は、その場にしゃがみこんだ。

「火神君・・・。」

僕は身体を抱えて寒さをこらえるよに
身体を丸めた。
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