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□見つけだして、抱き締めて
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寂しいなんて思っても
誰も気付いてはくれなかった。
でも
君には気付いて、欲しい。
お願いします。
見つけだして 抱き締めて
寒い朝。
無機質な携帯がバイブレーションしてメールがきたことを伝える。
「?、火神君から?なんでしょう」
毎朝、僕と火神君は一緒に学校に通っている。
あと5分くらいと思って待っていると今日は一緒に行けないというメールが届いた。
仕方ないですね。
僕は雪が降り出すような重い空の下、マフラーに顔を埋めて隣にあるはずの体温がないことを寂しいと思った。
「あ……。」
教室に入ると、何故か火神君がいて僕はその事に驚いたが、さらに驚いたのがありえない人だかりが火神君の席で出来ていたから。
トコトコと火神君の後ろの席へつく。
近くまでくるといつもは振り向いて笑顔をくれる火神君は人だかりで見えないし、彼は僕に気付いていない。
胸の奥がチリリと焼けた。
その痛みはどんどん広がっていく。
火神君、僕を………。
「できたーっ!!」
火神君の声が教室いっぱいに広がり、周りの人達は拍手と笑い声を送った。
次第に人だかりが減っていく。
やっと彼に話し掛けられると思った矢先、可愛い女の子が火神君に話しかけた。
「火神君、教えてあげたんだから今日、一緒にお昼食べようよ。」
僕は、その言葉で体と心にガツンと衝撃がきた。
いつもお昼は一緒に屋上で食べてる。
一応恋人同士だから、キスとかしたりする。
部活の次に幸せな時間。
「ん――、あー、いいぜ?」
「本当!?やったぁ!」
キャッキャッとはしゃぐ女子と反比例して、僕は痛みが酷くなるのを感じた。
痛い、悲しい。
あんなに近くに居たのに、この短時間で凄く遠くに感じる。
また、離れていくんですか。
また、僕にはなにも残らずに。
また、一人で。
悲しみにちかいこの感情は忘れたはずなのに。
僕は下唇を噛んだ。
昼休み。
「……火神君、火神君。」
給水タンクの裏でかちかちと歯をならせながら火神君を呼んだ
届かないと、わかっているのに。
あれから火神君と話そうとすると女子や火神君の友人に邪魔をされ、一言も口を聞いていない
火神君は僕を忘れているように授業中も後ろを向いてくれない
もう、火神君は僕なんて必要ないんでしょうか。
マイナスの方向へ考えが流れて行くたびに胸の痛みが酷くなる。
痛い、痛いです火神君。
目を閉じて体を丸めると、入口から声がしる。
……火神君と、あの女の子?
僕は影を最大限薄めて入口付近の壁にこっそりと立つ。
「朝はサンキューな、ほんっとあの問題訳わかんなくてさ、助かったぜ」
「アハハ、そうかな?火神君読み込み早いよ」
火神君の優しい声と、女の子の可愛い声が屋上に響く。
僕がなんだか邪魔と言われている気がした。
「あ、あのね火神君。」
「んぁ?」
「私、火神君の事が、好きな……」
バタン!!!
女の子の声を邪魔するように派手な音をたててドアを開け、走りだす。
一瞬だ、きっと気付かない。
僕の通った道に雫が落ちていった。
「く、ろこ?」
火神君が気付いていたとも知らずに。