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□抱きしめる
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抱きしめる
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「黒子テツヤさん。オレと結婚して下さい」
「…はい?」

突拍子もないセリフが聞こえた気がして、黒子は思わず聞き返した。
すると、「だから結婚しようって言ってんだろ!」と逆に怒られてしまう。
えーと。頭の中で情報を処理する。
落ち着け落ち着け落ち着け自分。ポーカーフェイスのまま、黒子は火神を見た。

「それは、まだ18歳じゃないですよーとか、そもそもボクたち男同士ですよーとか、そういうのはナシの方向ですか?」
「ナシの方向だ」
「…なんでまた」

火神はやることなすこといつでもいきなりすぎるのだ。
付き合うのも、キスをするのも、なんだって火神は急だった。
そんな彼のペースに巻き込まれてしまうのが、嬉しかったりするのだけれど。

それでも、あまりにもこれは突然すぎた。と、いうよりそういう問題どころではない。
どんなにナシの方向で考えようとしたって、自分達は結婚できないのだ。たとえどんな壁を乗り越えようと、同性という、どうしようもない壁は高くそびえたっている。

それを心の中で確認すると、胸がちくりと痛むのを感じる。
その痛みに、黒子は視線を落とした。
今、傷つくということは自分も彼との将来を望んでいるなによりもの証拠だと黒子は知っている。
なにも考えないで抱きついてしまえたら、どんなに楽だろうかと思った。

でも、黒子は楽天家ではなかったし、しかし現実主義者なところがあった。

そんな黒子だからこそ、素直に火神の胸に飛び込むことができない。
すると、火神はでっかい声で「テツヤッ!!」と名を呼んだ。
名前呼びであることや大声にびっくりして、黒子は条件反射のように「はい!」と返事をしてしまう。

どこまでも素直な黒子を見て愛しそうに微笑みながら、火神は言った。

「ごちゃごちゃ考えるの禁止な!
オマエが、オレとずっと一緒にいたいって思ってくれてんなら、ただ頷きゃあいい。したら、なにがあっても…
―――オマエのこと、守ってやっから」
「――――……っ」

まるで、昔のドラマにワンシーンのようなクサいセリフ。
それでも黒子は幸せだと思った。そして、そんな彼に想われている自分が誇らしかった。
一歩、また一歩と火神に近づく。にっこりと笑いながら返事を催促するように首をかしげる火神に、しっかりと抱きついた。
すぐに自分の背中に返される力強い腕が、なんて愛しい。
彼さえいるなら理想主義者にだって、なってしまいたくなる。

「火神くん、好きです」
「おう」
「ボク、火神くんに…大我に、ずっとついていきます」
「…うん」

幸せに、なろうな。 優しい音色で付け加えられた言葉を合図に二人はそっとキスをする。
そんな二人を祝福するようかのように、夜空に浮かぶたくさんの星が瞬いた。



お星様を抱きしめる

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